文化・芸術

2021年の展覧会、今年の10本

今年見た展覧会の、私的によかったもの10本!毎年恒例で一年を振り返ってみたいと思います。
 
今年もコロナの影響が色濃かった年です。中止や会期短縮になった展覧会も多くありました。作品は会場に並んでいるのに見ることができない……私たちも残念ですが、作り上げる側の無念さは計り知れないです。
 
事前予約が必要な展覧会も増えました。仕事の関係上、予定がつきにくい私としては、空き時間でふらっと展覧会に行く事が多かったのです。結果、予約が取れず行けなかった展覧会もありました。
 
来場者減、コロナ対策などの影響もあってかチケット代が2000円を超える様な展覧会も少なくはありませんでした。予算の都合もあり、高額なものは見に行くのを絞らざるを得ないという本音もあります。
 
そんなこんなで展覧会を見る本数も減りました。そんな中での今年の10本です。※去年までの「今年の10本」のリンクは一番下に貼っておきます。
 
まずはいつもどおり今年の10本、基本的には順位はつけず、見た順番で古いところから書いていきます。
 
 
【今年の10本】
 
阪本トクロウ|デイリーライブス
武蔵野市立吉祥寺美術館 2021/1/9-2/28
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/02/post-109ffe.html
 
吉祥寺美術館は規模としては小さな箱ではありますが、だから一つ一つをじっくり見る事ができて、それがトクロウさんの絵の鑑賞方法にハマっていた感じがあります。年明けに、そしてこんな時期だからこそ、見ていて安心する、どこかで見た事がある、でも視点が新しい、そんな景色を欲しているのかもしれません。 
 
 
冨安由真展|漂泊する幻影
KAAT EXHIBITION 2021/1/14-1/31
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/01/post-c115c3.html
 
印象にとにかく残る展示でした。いろいろな仕掛けがハマっています。正直、資生堂ギャラリーの時は好きな展示なんだけどお化け屋敷の流れでで今後どこまでいけるのか、と言う勝手な心配をしたものですが、この前のいちはらアートミックスの展示などを見ても、スマートながらも印象的なものを残す展示が良かったので、アートフェス系などでこれからひっぱりだこになるのではないかと?
 
 
千葉正也個展
東京オペラシティアートギャラリー 2021/1/16-3/21
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/02/post-a05b89.html
 
アイデアが面白いのはもちろんですが、それを展覧会にするときの手を抜かないその完成度にもびっくりしました。亀が見るための絵画展示。それを見る私たち。亀を見る私たち。私たちを見るカメラ。あれ、亀とカメラは駄洒落で繋がっている?まぁ、とにかく、これなんだろう?と思ってそれが亀の通路だと分かって、それを見せられていたのかと分かった時の衝撃はなかった……。
 
 
複製芸術家 小村雪岱 ~装幀と挿絵に見る二つの精華~
日比谷図書文化館 2021/1/22-3/23
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/02/post-b7dfcf.html
 
日比谷図書文化館と三井記念美術館が小村雪岱展を開催。二つとも満足な展覧会でした。個人的にはごちゃっとした図書文化館の展示が好きでしたのでこちらをあげていますが、二つで一つの展覧会として見ても面白いです。 
 
 
電線絵画展-小林清親から山口晃まで-
練馬区立美術館 2021/2/28-4/18
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/03/post-db83b5.html
 
なかなか企画が面白い展覧会でした。今年あちこちで見た新版画もあったし、それを描くか描かないか、と言う画家の差が面白い。ミスター電線風景、朝井閑右衛門はヤバかった。現代アートもあってとにかく楽しく見る事ができた展覧会です。
 
 
澤田知子 狐の嫁いり
東京都写真美術館 2021/3/2-5/9
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/04/post-57d4d1.html
 
証明写真のあの人が、基本のアイデアを変えないまま大きく広がっていました。あのアイデアだけでは厳しそうだなぁ、と思っていた私が失礼でした。アイデアをここまで膨らませて、レベルアップしていたとは!素晴らしい展覧会であり、素晴らしい作品でした。
 
 
マーク・マンダース―マーク・マンダースの不在
東京都現代美術館 2021/3/20-6/20
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/04/post-212545.html
 
今年の展覧会の中でも、後々まで記憶に残りそうなものでした。良くわからないコンセプトを自分なりに解釈して楽しむ、そんな現代アートならはの楽しさがある展覧会。コンセプトを無視しても単純に見ていても、作品や空間に雰囲気があるのも良いですね。企画展の後に同じ作品を別の構成で再構築した展示、マーク・マンダース「保管と展示」をそのままMOTで開催したのも良かったです。
 
 
あやしい絵展
東京国立近代美術館 2021/3/23-5/16
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/04/post-e5d870.html
 
企画展の濃さでは今年一番だったのではないかと。あやしい、と言うタイトルに負けないあやしい絵が集まっていました。良くぞここまで集めたと言うのもあります。広告ポスターや小村雪岱の絵も出ていて良かった。
 
 
イラストレーター 安西水丸展
世田谷文学館 2021/4/24-9/20
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/08/post-c08578.html
 
安西さんが自分で企画した様な楽しい展示。安西さんの雰囲気を感じる事ができる様な作品達。シンプルで印象的なその絵達は今でも記憶に残っていくもの達ばかりでした。一つ一つが全て魅力的な展覧会でした。
 
 
ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
ポーラ美術館 2021/9/18-2022/3/30
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/12/post-e9421b.html
 
素晴らしい展覧会。こちらも後々まで記憶にはっきりと残りそうな展覧会です。見た目だけで見ても美しく楽しめる。意味合いを解釈しようとしても楽しめる。現代の展示ではそのバランスが両方取れている展示が心に残っていくものになるのかもしれません。まぁ、そんな難しいことを考えなくても好きな展示でした。それだけでも良いのかもしれません。
 
 
ここまでが今年の10本です。これ以外にコメントしたい展覧会を幾つかあげます。
 
 
 
【トピックス】

移転のため、現在の地では最後の展覧会に滑り込む事ができたのが静嘉堂文庫美術館「旅立ちの美術」展武蔵野美術大学美術館「膠を旅する」展も面白かったです。画の材料としての膠をこれほど掘り下げた展示は今までにあったでしょうか?延期により開催がなくなるかと思われた「いちはらアート×ミックス2020+」(2021/11/19-12/26)に友人達と一緒に行く事が来たのも良い思い出。その時に見た市原湖畔美術館「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」展(2021/10/16-2022/01/16)もよかったです。『ミュージアムグッズのチカラ』(大澤夏美 著)と言うグッズに注目した本も発行されてました。
 
「旅立ちの美術」展
静嘉堂文庫美術館 前期 4/10-5/9、後期 5/11-6/13延長
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/06/post-631ba5.html
 
膠を旅する―表現をつなぐ文化の源流
武蔵野美術大学美術館 2020/5/12-6/20
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/06/post-04cfc0.html
 
『ミュージアムグッズのチカラ』大澤夏美 著(国書刊行社)
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/cat4230671/index.html
 
 
 
【西洋美術】
 
西洋美術では印象派とその周辺の美術動向がわかる展覧会をまとめてみる事ができるのが良かったです。三菱一号館美術館「印象派・光の系譜」展Bunkamura ザ・ミュージアム「甘美なるフランス」展ポーラ美術館「モネ-光のなかに」展を同時期にみて印象派に影響を与えた、印象派が影響を与えた動きを見る事ができました。この流れでは事前予約がなかなか取れなかったゴッホ展に行けなかったのが残念。三菱一号館美術館「コンスタブル展」アーティゾン美術館「琳派と印象派」展なども合わせてかなり理解できた気がします。
 
イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
三菱一号館美術館 2021/10/15-2022/1/26
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/11/post-13b707.html
 
テート美術館所蔵 コンスタブル展
三菱一号館美術館 2021/2/20-5/30
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/04/post-08d704.html
   
 
 
【日本美術】
 
川端龍子作品と現代アートが並ぶ大田区立龍子記念館「川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション」、三菱系三館の名品が並ぶ三菱一号館美術館「三菱の至宝展」、さすがの企画力なサントリー美術館「ざわつく日本美術」、美術館ではこれは出来ないだろうイベント「北斎づくし」、力の入った東京藝術大学大学美術館「渡辺省亭」展、酒井抱一 夏秋草図屏風と鈴木其一 夏秋渓流図が並んだ根津美術館「鈴木其一・夏秋渓流図」展など良いものも多かったです。
 
川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―
大田区立龍子記念館 2021/9/4-11/7
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/09/post-f56fdf.html
 
ざわつく日本美術
サントリー美術館 2021/7/14-8/29
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/08/post-1e2494.html
 
北斎づくし
東京ミッドタウン・ホール 2021/7/22-9/17
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/07/post-b92af9.html
 
渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画
東京藝術大学大学美術館 2021/3/27-5/23
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/03/post-8438e5.html
 
 
 
【新版画/挿絵】
 
上の日本画ジャンルの中でも今年は新版画や挿絵、装画などの展示が多かったのが印象的です。小村雪岱はベスト10にもあげていますが太田記念美術館「鏑木清方と鰭崎英朋」たばこと塩の博物館「杉浦非水」など挿絵などに関する展示が多かったです。 そして新版画周辺の動きとしては太田記念美術館「笠松紫浪」東京都美術館「吉田博展」平塚市美術館「川瀬巴水」大田区立郷土博物館「川瀬巴水」SOMPO美術館「川瀬巴水」、そして新版画総集編とも言える様な日本橋高島屋S.C.「新版画ー進化系UKIYO-Eの美」と揃いすぎ。電線絵画展にも出ていましたし、MOA美術館でも吉田博と川瀬巴水の展覧会をやっていますね。
 
川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-
大田区立郷土博物館 前期:2021/7/17-8/15、後期:2021/8/19-9/20
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/09/post-45b059.html
 
千葉市美術館所蔵 新版画ー進化系UKIYO-Eの美
日本橋高島屋S.C. 本館 8階ホール 8/25-9/12
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/09/post-1ce0ad.html
  
 
 
【現代美術/建築/デザイン/カルチャー
 
現代アートはベスト10に入れていますが、東京オペラシティ アートギャラリー「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」はコロナで企画展が中止になったのをうまく展開していました。目黒区美術館「包む」、国立科学博物館「木組」なども面白かったです。東京国立近代美術館「民藝の100年」は賛否分かれて色々な意味で注目されていますね。国立新美術館「庵野秀明展」のごちゃ混ぜ感も印象に残ります。建築ではパビリオン・トウキョウ2021、世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」、松濤美術館「白井晟一 1部」、などが面白かったです。隈研吾展、佐藤可士和展などもありましたね。展覧会ではありませんが昨年から引き続きTHE TOKYO TOILETもチェックしています。
 
「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展
東京オペラシティ アートギャラリー 2021/4/17-6/24
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/06/post-eab91a.html
  
包む-日本の伝統パッケージ
目黒区美術館 2021/7/13-9/5
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/08/post-110364.html
 
パビリオン・トウキョウ2021
新国立競技場周辺エリア9か所 2021/7/1-9/5
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/08/post-5364d5.html
 
アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話
世田谷美術館 2021/3/20-6/20
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2021/06/post-3dc7e1.html
 
  
 
今年見た展示は全部で200本となっています。多い時は300本だったので少ない方ではありますが、コロナだけではなく、私の活動量が落ちているのも正直あるかと思います。もちろん展覧会は数だけではないのですが、数をこなしてわかることも確か。ただ、これからは見方を変えていく、そんな時期なのかもしれません。
 
今年、いろいろ大変な歳ではありましたが、来年は今よりも良い年になります様に。良い年にしていきましょう!
 
 
 
以前2012年に10年間の振り返りと言うのをやりました。10年後2022年にもう一度やろうかと思っていたらもう来年じゃないですか。出来るかな……。
 
過去10年で印象に残った展覧会10本選定
過去10年で印象に残った展覧会洗出し編

 

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ポーラ美術館:ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?

ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
ポーラ美術館
2021/9/18-2022/3/30
 
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ポーラ美術館では同時代の作家を単独で取り上げるのははじめてとのこと。ここで現代アートの展覧会は幾つか見た事ありますが、そういえば現代作家の個展扱いは初めてですね。
 
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ロニ・ホーン展、とても好みの展覧会でした。水をテーマにした作品が多く、この自然いっぱいの箱根の森との親和性が高かったのも好印象の理由の一つかもしれません。
 
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現代アート好きの人なら是非見てほしい展覧会。パッと見だけでもとても綺麗で満足出来るのに、作品をじっくりと深く読み込むと更に満足度が上がる展示です。
 
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感覚で見ても思考で見ても楽しめる展覧会。¥なのですが、とにかく深く突っ込むと底なしにずぶずぶとハマってしまう考察性が高いという両方の指向を持った作品が多かったです。
 
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最近流行りの、綺麗だけど中身が薄いという展示では決してありません。でも、そういうものを求めている人たちも満足する、って凄いですよね。
 
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そぎ落とされた作品、何かを暗示するような作品、答えを出さず考えさせるような作品たち。箱根まで行く価値はある展覧会だと思います。
 
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最初にあるガラスの作品は水をたたえた様な透明で光沢がある面を見せてくれます。静かに、触れたり息を吹きかけたら波打ちそうな透明な個体。
 
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詩や文学をちりばめたような作品。アイスランドに魅了され、制作を行った作品。
 
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水、自然を表現するのに表現しきれないもどかしさの現れの様でもありました。
 
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テムズ川の水面で表現されるものは物語なのか、映画のシーンなのか、音楽なのか。
 
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ドローイングやコラージュはそのような頭の中のものを吐き出すためのものなのか、形に出来そうで形ににならない、手が届かない何かの様です。
 
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ポートレートも一つの顔が表す無数の表情を捉えるようで、見ている私たちは最終的にとらえられない様でもあります。
 
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屋外の森の中の作品もまるで昔からここにあるようなたたずまい。側面に揺らぐ木陰と水の揺らぎ、樹々の合間から射す光。
 
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答えが出来る事だけが正解ではない、答えが出ないことの方が多い、そんな意識で見ていた展覧会です。
 

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イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン

イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
https://mimt.jp/israel/
三菱一号館美術館 2021/10/15-2022/1/26
  
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三菱一号館美術館「印象派・光の系譜」展に行ってきました。日本で人気の印象派の展覧会、土日は既に混雑している様ですね。後になるほどさらに混みそうなので行くなら今のうち!?※ブロガー内覧会に出席、以下掲載の写真は許可を得て撮影されています。
 
ちなみに三菱一号館美術館、来年の展覧会スケジュールが発表されています。上野リチ展、シャネル展に続いてヴァロットン展の開催とは嬉しい!
  
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この展覧会「印象派・光の系譜」、69点展示のうち59点が日本初公開という名品たちが並んでいます。イスラエル博物館といえば死海文書やエッシャー作品ですが……他にもこんなに印象派の名作が揃っていたとは。印象派が好まれるのはユダヤ、アメリカ(プロテスタント)、そして日本と言います。宗教性が無い絵画=印象派の作品が人気、という共通点があるのですよね。
 
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内覧会の様子
 
さて、タイトル通り印象派とそこから連なる系譜を見て行く展覧会。印象派以前のバルビゾン派の作品が並び、そこから影響を受けた印象派、そしてその印象派から影響を受けた新印象主義やポスト印象派の作品と続きます。「光の系譜」とは良く名付けたもの。
 
今回の展覧会では水、自然と人、都市、人物と静物などのテーマ別に章立てされていますが、私はこの展覧会に出ていない流派もふくめて、印象派前後の流れを振り返りながら見ていきたいと思います。
 
 
まずは印象派以前。印象派に影響を与えたのが、屋外で作品を作ることを始めていたバルビゾン派(コロー、ミレー、ドービニーなど)、他にもロマン主義(ドラクロワ、ターナーなど)、写実主義/レアリスム(クールベなど)などになります。
 
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コローの絵などが並ぶ序盤の展示
 
今回の展覧会ではバルビゾン派のコローやドービニーの作品がまず並んでいました。他にもブーダンやクールベの良品も。モネの海とクールベの海の比較ができたりするのも嬉しいですね。 
 
 
そして印象派。当時、芸術としては低い位置づけだった普通の人やものや景色を描く行為。屋外での制作、前衛的な筆触分割などによって伝統を打破しようとしていたグループです。アカデミズムに反対する若き反抗心というものでしょうか?当時としては最先端の前衛芸術だったのですよね。アカデミックなフランスよりもアメリカなどでまず作品が買われたと言います。
 
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イスラエル博物館所蔵 クロード・モネ「睡蓮の池」
 
今回の展覧会ではモネの睡蓮の連作を比較できるのが見どころの一つ。それも見事な作品ばかり。イスラエル博物館所蔵の睡蓮をまず途中の大きな部屋で見る事が出来ます。1907年の作品、睡蓮の当たり年だそうです。
 
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特別展示:和泉市久保惣記念美術館 及び DIC川村記念美術館所蔵 クロード・モネ「睡蓮」
 
そして後の方の部屋に特別展示として日本にある同じ構図の睡蓮を2点展示。DIC川村記念美術館と和泉市久保惣記念美術館所蔵の睡蓮が並んでいます。なんと、後日もう一点睡蓮(東京富士美術館蔵、11/30から)が追加されるという贅沢。モネの連作は構図は近くても時間が違うと光の加減や色合いが変わってくるのが面白い。
 
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これぞ印象派な安定安心なアルフレッド・シスレー「サン=マメス、ロワン川のはしけ」
 
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アメリカの印象派チャイルド・ハッサム「夏の陽光(ショールズ諸島)」の明るさ
 
印象派としては安定安心のシスレーも良い。とても地味なのですが、とにかく地道に風景画を描いていて、ずっと心は印象派な画家です。アメリカの印象派、ハッサムの綺麗な絵も目を引きました。
 
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目を引くカミーユ・ピサロ「エラニーの日没」
 
そして見事なピサロもあります。ピサロは一度新印象派の影響を受けて点描手法を手掛けていて、その浮気心をうまく自分の作品に、技法に取り込んだもの。
 
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ピエール=オーギュスト・ルノワールの人物画の中に1点カミーユピサロ(一番左)の人物画
 
展覧会後半にあった人物画や静物画コーナー、人物画はルノワールが独壇場かと思ったら一番左にあるピサロの人物画が良かった。ピサロはあまり人物画は描いていないようですが、これは欲しいなぁ。
 
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印象派と同じ時代の画家 ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」
 
また、三菱一号館美術館と言えば、ルドンの「グラン・ブーケ」も印象派と同時代に活躍した作家として見る事が出来ます。
 
 
そして印象派後として新印象主義(スーラ、シニャックなど)、ポスト印象派(ゴッホ、ゴーガン、セザンヌなど)の作品も良い物ばかり。
 
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ポール・シニャック「サモワの運河、曳舟」の点描は目を引きます
 
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セザンヌの初期の頃の筆跡が荒々しい作品
 
今回の展覧会には綺麗なシニャックがありましたね。新印象主義と言えば点描技法による派手さが目立ちますが、構図などもうまいです。また、セザンヌの初期の粗い風景画などは初めて見ました。このころから実験体質なセザンヌさん……。
 
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ポール・セザンヌ「陽光を浴びたエスタックの朝の眺め」
 
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フィンセント・ファン・ゴッホの名品が並ぶ
 
セザンヌはとにかく、何を見ても、風景画でも静物画でも、どれを見てもセザンヌと分かるのがすごいですね。後はゴッホもやはり良い。麦畑の緑に赤いポピーを乗せた見事な作品と積藁を描いた黄色の名作とが並んでいる場所、ここでは誰もが足を止めてしまいます。同じ時期に東京都美術館で開催している「ゴッホ」展も併せて見に行きたいところ。ゴッホ展の後にこちらに来るのもこの時代の流れを把握するのにも良さそう。
  
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ポール・ゴーガンはどの時代の絵も才能を感じさせてしまう
 
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ポール・ゴーガン「静物」、まるでセザンヌの様な
 
また、ゴーガンの部屋。個人的にはゴーガンの絵は好きにはなれないのですが、常に才能あふれる絵を描く天才だということは判ります。静物画コーナーではパッと見はルノワール作品の綺麗さが目に入るのですが、ゴーガンの静物画がかなりセザンヌっぽくて良い。意識していたのでしょうか?
 
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レッサー・ユリィの都市を描いた絵が話題になっています
 
そして話題のレッサー・ユリィ。今回の展覧会のミュージアムグッズ、こちらでレッサー・ユリィのポストカードがとても人気とのこと。なんと、一度売り切れてしまい、急いで追加で再入荷したらしいです。
 
三菱一号館美術館のブログにも出ていますが、今回ポストカードを額装してみましょうという提案のコーナーながある様です(私が行った時間はショップがしまっていてこのコーナーまだ見れず……)。ポストカードせっかく買ったならうまく飾りたいですよね。
 ↓
10月15日に「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展が開幕しました。
https://mimt.jp/blog/store/10736/
 
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レッサー・ユリィ「赤い絨毯」、タイトルも良い
 
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ナビ派のピエール・ボナール「食堂」
 
展覧会の最後の部屋にはレッサー・ユリィの人物画がありました。レッサー・ユリィ作品の中では個人的には一番これが目に入ってきましたね。さらにこの最後の部屋にはゴーガンに影響を受けたナビ派、ヴァイヤールやボナールの作品があります。
 
 
この印象派の流れをくんでいくと、この後、表現主義やフォーヴィスムやキュビズムとなります。表現主義(カンディンスキー、シーレ、ムンクなど)、フォーヴィスム(モロー、マティス、ヴラマンク、ルオーなど)、キュビズム(ピカソ、ブラック、レジェなど)あたりに関しては現在 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「甘美なるフランス」展を併せて見るとつながっていきます。セットで見てほしいです。
 

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速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―

速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―
https://yamatane-museum.jp
山種美術館
2021/9/9-11/7
 
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速水御舟は好きな作家でこの山種美術館でも今まで何度も作品を見ていたのですが……こんな細やかな所までじっくり見たのは初めてかも。そのくらい今回の展覧会では御舟の技法に沈み込めました。そして弟子の吉田善彦は古田様式と言う面倒でこだわりな手法が有名。少し変態的なこだわりが凄くて病みつきになりますね。
 
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速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》山種美術館所蔵
 
まずは速水御舟、今村紫紅の色彩に影響を受け、岸田劉生の西洋の技術を意識し、そして墨や琳派などの技法に戻ってきます。とにかく上手い。苔は砂子で表現、芝は花緑青の水を弾く性質を利用する、など素材の特徴と実際の表現をうまく組み合わせている。金箔でなく撒きつぶしで金を表現するなど。様々な技法を習得していて、それを適切なところで使える。それでいて絵としてのバランス感覚も良い。画家として最強ですよね。
 
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速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》一部 山種美術館所蔵
 
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速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》一部 山種美術館所蔵
 
《桃花》の3Dの様なぷっくり感や《夜桜》の夜の背景に浮かぶ銀色の様な桜の花の透け感はじっくり近くで見るとため息が出ます。《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》の蜘蛛の巣には雲母を使って揺れる感じを表現。《紅梅・白梅》の右の赤は古木、左の白は若木というのは知りませんでした。《和蘭陀菊図》は裏彩色をして居たという。伝統的な古画の研究をしていたからこその技法の選択。
 
最後の小部屋なんてここだけで御舟展と名乗ってもおかしくない。《暗香》は夜の梅の香りが見える様。《あけぼの・春の宵》のシルエットと空気感、そして《炎舞》のくっきりとした部分とぼんやりした部分の差の妙。
 
 
吉田善彦は御舟、小林古径、安田靫彦に師事した人。古田様式と言う面倒でこだわりな手法が有名。彩色してもみ紙、紙をくしゃくしゃにしたものを伸ばして金箔貼る。
 
目を引いたのは《桂垣》と言う絵の構成・デザインの強さ。これは琳派の様な日本画におけるデザイン性を持つ福田平八郎の様だなとも思いました。執拗な木のシルエットを描いてたと思ったら後期の絵の色の美しさなど、ちょっと変態チックな感じなのに、気持ちよい絵が多いと言うやみつきになりそうな作品たち。
 

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川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-

川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/manabu/hakubutsukan/tokubetsu/tokubetuten_kawasehasui.html
大田区立郷土博物館
前期:2021/7/17-8/15、後期:2021/8/19-9/20
 
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川瀬巴水が大田区にも住んでいたということで、大田区郷土博物館で川瀬巴水の展覧会が開催。なんと無料で見ることができます!
 
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前期後期入れ替えで400点。東京の風景と旅行先での風景を分けて展示。私は後期に行ったので旅先風景画を見ました。
 
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今回の見所はスケッチ画。旅先での、日記やスケッチも併せて展示。中には構図そのまま使用されているものもあります。スケッチのレベルの高さ。
 
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同じ構図の班で色を変えて時間や天気の違う図として見せる版画ならではの違いなども多く見せてくれています。
 
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岩崎家の依頼で箱根の風景作品を作ったり(山のホテル)、ポスターなども作っています。当時、売れっ子だったのですね。
 
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4月から6月で平塚市美術館で川瀬巴水展があり、この後も10月からSOMPO美術館で川瀬巴水展が開催。電線絵画展などでも出ていました。現在、日本橋高島屋の千葉市美術館コレクションの新版画展にももちろんあります。
 
 

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千葉市美術館所蔵 新版画ー進化系UKIYO-Eの美

千葉市美術館所蔵 新版画ー進化系UKIYO-Eの美
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/shinhanga/
日本橋高島屋S.C. 本館 8階ホール
8/25-9/12
 
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木版画に新たな表現を加えた新版画。最近話題ですが、これ程網羅する形で紹介したこの展覧会は凄かった。少し前の時代、小原古邨などから、伊東深水や川瀬巴水の代表的な作品、独自展開の橋口五葉と吉田博など、風景画、役者絵、美人画まで一揃え。美人画が良かったです。伊東深水の美人画から、目が大きな山川秀峰の美人、しっとり美人の鳥居言人(艶や過ぎ発禁!)、小早川清の危ういモダンガールなど。ここらは皆、鏑木清方に師事してるという。清方の美人画界での影響力が凄いですね。今回は写真がNGでしたのでメモをしっかりと書いていってみます。
 
プロローグ:新版画誕生の背景
明治時代に石版画や銅版画の人気があり木版画が廃れ、日清戦争で報道錦絵として最後の役割を終えていく。
滑稽堂 秋山武右衛門と大黒屋 松木平吉などのから出ている小原古邨などの木版画が出ている。ここらは精巧な彫りと擦りにより肉筆画に近く版画としての魅力が乏しい。そこで木版画ならではの美を取り戻すべく渡邊庄三郎が復興に取り組む。広重の再摺を見て、浮世絵の美しさに目覚めた渡邊庄三郎。髙橋松亭の下絵で新作を出す。外人相手に売れ行きよく、新版画への資金源にする。大正初めから浮世絵の復刻、そして新版画へ……。
 
第1章:新版画、始まる
外人の作家に下絵を描いてもらうことで伝承の技に拘る職人を約束事から解放した作品を作る。そして下絵づくりに橋口五葉(美人画)、伊東深水(美人画、風景画)も参加。
 
第2章:渡邊版の精華
伊東深水が近江八景を作る。これをみて川瀬巴水が新版画の道へ。巴水は塩原三部作を皮切りに新版画を代表する作家へ。役者絵の名取春仙、山村耕花を加え、これで美人画、風景画、役者絵の作家を揃える。ただし、関東大震災で作品や版木が焼け、実験的な作品は出せなくなるが、その後も良い作品を出し続ける。
 
伊東深水は鏑木清方に入門。手掛けた美人画シリーズは、これは売れたろうなぁと言う魅力的なものでした。川瀬巴水は海外で人気が高く北斎、広重と共に3Hと呼ばれることもある。今年は巴水作品があちこちの展覧会に出ています。そして、電柱描いてますね。
 
 
第3章:渡邊庄三郎以外の版元の仕事
その他の版元の展示の中では美人画が目立ちます。山川秀峰は目の大きな美人が魅力的。清方に師事し、門下では深水、寺島紫明と共に美人画三羽烏と称される。
 
鳥居言人は少ししっとりした美人画です。「朝寝髪」の色っぽさはすごい。艶やか過ぎて発禁になったとか!役者絵の鳥居派8代目で、清方に師事で美人画を学び、最後には八代目鳥居清忠を名乗る。
 
第4章:私家版の世界
山本耕花の様に震災後渡邊庄三郎の元を離れ自ら版元になり思うがままに制作する作家も出てくる。山本耕花はポスターの様なモダンな文化を描いていた。洋画家 橋口五葉の私家版すべてが展示されている。なんか、女性の目がみな疲れてる気がする。ロセッティに影響受けたという話です。

吉田博は震災で版木を焼失後私家版を制作。洋画の表現を基本とし、光や空気感を描写。最後に小早川清のモダンガール、危うい感じの女性たち。現代女性を描くそれは昭和のネオ浮世絵。小早川も清方に師事。
 
 
と言う感じで、ここまで新版画を総括して見せてくれる展覧会が凄いです。そしてこれだけのコレクションを持っている千葉市美すごい。浮世絵を多く持っていることは知っていましたが、新版画まで網羅しているとは。

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川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―

川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―
https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564
大田区立龍子記念館
2021/9/4-11/7
※掲載している写真は内覧会で許可を得て撮影しています。
 
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現代アートと川端龍子の作品が並ぶ壮観な展覧会でした!現代アートコレクター 高橋龍太郎氏のコレクションと川端龍子の絵がコラボレーションする展覧会です。現代アートをこの館で展示するのは初めてとのこと。
 
大田区には川端龍子、髙橋コレクション、川瀬巴水とアートが豊富と言います。今回は前二つのコラボとなりますね。そして龍子記念館から歩ける距離の大田区郷土博物館で川瀬巴水展が9月20日まで開催というのも良いです。
 
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ちなみにこの龍子記念館は、大田区に暮らした川端龍子が自らの設計によって自宅の前に開館した美術館です。龍子の作品を展示するための空間なのですね。天井の高さ、間仕切りの無い一繋がりの部屋、どれも流離の大きな作品にぴったりで「会場芸術」を目指した龍子にふさわしい会場でした。
 
全部今の時代の現代アートかと思う位に斬新で、現代アートもこの会場に負けていない。これらがこの部屋に並ぶのがしっくりきます。
  
龍子の絵と、会田誠とのモチーフ、鴻池朋子との表現、天明屋尚との世界観、山口晃―との着眼点など、絵具の差はあれど日本画の原点から発する多様な表現と近似点を見比べることのできる展覧会です。
 
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まずは入り口すぐにこの展覧会を象徴する二つの作品が見えます。手前の壁側に川端龍子《香炉峰》、奥の方には会田誠《紐育空爆之図(戦争画 RETURNS)》 。ともに戦闘機をモチーフにした作品。
 
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川端龍子《香炉峰》(大田区立龍子記念館)。なんと透明な機体の戦闘機と言う斬新な絵です。大きさもすごい。この空間に似合ってます。
 
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会田誠《紐育空爆之図(戦争画 RETURNS)》(高橋龍太郎コレクション)。こちらは加山又造の千羽鶴と洛中洛外図屏風をイメージしたと言う話もある会田さんの屏風絵。ホログラムペーパーの戦闘機が煌めいています。引用を超えた作家の個性へ昇華した作品とも言えます。
  
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いくつか川端龍子《水雷神》(大田区立龍子記念館)など戦争をイメージさせる龍子の絵が並びます。その中の一つ川端龍子《爆弾散華》(大田区立龍子記念館)。これがすごい。爆風で野菜などいろいろなものが飛び散る様を絵にしたもので、本来なら惨劇のはずなのに、一瞬を切り取ったこの絵ほまるで琳派のデザイン的な美しさにも見える。
 
戦争をイメージする事で会田誠との繋がりのようにも見えるが、爆風で吹き飛んだ感じが次の鴻池さんの飛び交うナイフに繋がるようにも見えます。
 
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鴻池朋子《ラ・プリマヴェーラ》(高橋龍太郎コレクション)と川端龍子《百子図》(大田区立龍子記念館)が並びます。動物と子供たちの笑顔の暖かさが鴻池さんの不思議な桃源郷の様な世界観が現れた作品につながっていくのか。鴻池さんは映像作品《ミミオ-オデッセイ》もありました。
 
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そして川端龍子《草の実》(大田区立龍子記念館)の黒い背景に金泥の草の絵。こちらはキリッと締まった感じですが、これらもある意味では桃源郷の様な世界ですね。東近美にあるほぼ同じ作品よりも一回り小さいのは個人向けに描いたものだからとか。
 
その奥には川端龍子《源義経(ジンギスカン)》 (大田区立龍子記念館)。源義経が大陸に渡りジンギスカンになったと言う逸話を元にした絵。ラクダと武者絵の組み合わせの違和感を楽しむ絵。
 
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そこから続いて山口晃《五武人圖》(高橋龍太郎コレクション)。組み合わせの違和感をニヤリとさせる絵ならお手のものなのが山口画伯。ここでは武者絵と現代の武器やメカニックの組み合わせ。一部骸骨のようなところは幽霊画からの引用でしょうか?
 
その隣にある川端龍子《夢》(大田区立龍子記念館)はその幽霊(絵に出てくるのはミイラ)に繋がるものか。とにかく目を引く幻想的な絵。ミイラが見る夢。飛ぶ蛾が夢なのか、それとも夢に集まる蛾なのか。
 
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山口晃《當卋おばか合戦》高橋龍太郎コレクション)ではバイクと馬の融合、現代人が扮する武士など詳細を見て楽しむ絵です。それに対して川端龍子《逆説・生々流転》(大田区立龍子記念館)でコミカルにも見えるが、実は台風に流されて困っている人々を描いたものを対比させています。
 
この《逆説・生々流転》は驚異となる水の流れを描いたもの。タイトル通り元ネタの横山大観の水の恵みの絵とは逆のことを描いたものですね。
 
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そして最後に川端龍子《青不動(明王試作)》(大田区立龍子記念館)と川端龍子《十一面観音》(大田区立龍子記念館)に挟まれた天明屋尚《ネオ千手観音》(高橋龍太郎コレクション)。
 
龍子の描いた観音と青不動を両脇に天明屋さんが描いた銃器を携えた千手観音があるという不思議な並び。さらにはその奥には龍子が持っていた奈良時代の《十一面観音菩薩立像》(大田区(東京国立博物館寄託))そのものがあります。
 
戦争から始まり、桃源郷を経由して、夢を通り過ぎ、信仰へといたる。そんな気配を感じた展覧会でした。展示室以外にも時間によっては敷地内の龍子の旧宅+アトリエや庭を見ることもできる様ですのでゆっくり余裕を持って行くと色々と見ることができそうです。
   
川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―
https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564
大田区立龍子記念館
 
2021/9/4-11/7 9:00~16:30 (入館は16:00まで) 
休館:月曜日(9月20日(月・祝)は開館し、その翌日に休館) 
入館料:大人500円、小人250円 ※65歳以上(要証明)と6歳未満は無料
主催 (公財)大田区文化振興協会
後援 朝日新聞東京総局、日本経済新聞社
   

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はしもとみお 木彫展 いきものたちの交差点/まなざしの軌跡/色彩と線-《イソップ絵噺》

はしもとみお 木彫展 いきものたちの交差点
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/index.html
武蔵野市立吉祥寺美術館
2021/8/21-10/3
 
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動物しかいない町、森町・猫町にバスに乗っていたら迷い込んでしまったのです……ここは動物しかいない町の交差点、と言う設定の展覧会に迷い込んでしまいました。
 
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チラシやポスターに登場するのは青森の人気犬「わさお」!去年亡くなった「わさお」を偲んだ銅像の原型となる木彫り作品を作ったのがはしもとみおさん。
 
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今年、情熱大陸にも出演したはしもとみおさんの作る動物達はなんかイキイキとした顔をしている。動かないイキイキとしたこの動物たちを見ていると本当の動物と触れ合うような感覚で癒されます。
 
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暑いし、感染症も気になるし、まぁ、体も心も何かと疲れるこの世の中、それには動物で癒されるしか無い!ですが、みんながみんなペットを飼っている訳でもなし、外にいる生き物と触れ合うのに抵抗ある人も多いでしょう。そんな時はご時世には美術館で動物に会って癒されましょう!
 
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スケッチや絵画の展示もあります。スケッチと立体をリンクしながらみていくのも面白い。
 
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犬や猫などの身近な動物たちが多いですが、良く見ると海の生き物なども居ますね。
 
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さてここが現実なのかファンタジーの世界なのかわからなくなってきました。さあ、森町、猫町と言う動物達が住む町に迷い込んでしまいましょう!
 
 
 
まなざしの軌跡
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/indexhama.html
武蔵野市立吉祥寺美術館 浜口陽三記念室
2021/6/3-10/3
 
色彩と線-《イソップ絵噺》
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/indexogi.html
武蔵野市立吉祥寺美術館 萩原英雄記念室
2021/6/3-10/3
 
いつものコレクション展も見ました。浜口陽三室は虫とか小さな生き物のメゾチント版画。てんとう虫がいいな。萩原英雄室は結構ダークなイソップ物語。いや図柄的にダークに見えるだけでダークな場面という訳ではないのですが。ダークに見えるのです。
 

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水の波紋展2021/TOKYO GEIDAI POP UP STORE『買える藝大』/東京ビエンナーレ 2020/2021/BAKU TAKAHASHI Exhibition/山崎美弥子展 “Night Rainbow”

水の波紋展2021 消えゆく風景から ー 新たなランドスケープ
http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202108/
東京・青山周辺 27箇所〔岡本太郎記念館、山陽堂書店、渋谷区役所 第二美竹分庁舎、テマエ、ののあおやまとその周辺、梅窓院、ワタリウム美術館とその周辺〕
2021/8/2-9/5
 
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幾つかの開催地のうち渋谷区役所 第二美竹分庁舎を見てきました。JR(ジェイ・アール)の作品は予約が必要だったので体験できず。
 
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竹川宣彰 猫オリンピック 開幕式。森美術館で前に見ました。ここでこの時期に出会えてうれしい。
 

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渡辺志桜里作品は大がかりでしたね。生命の循環サイクルを作品で表現。生きた金魚や植物があります。ま、実際はこの規模だと短い期間でしかサイクルは再現されないかとは思いますが、見える化としては良いかも。
 
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UGO、笹岡由梨子の作品もこの使われていない庁舎を退廃的な雰囲気にしていて(ぶら下がったコンセントとかもそのまま)良いです。
 
 
 
TOKYO GEIDAI POP UP STORE『買える藝大』
https://mitsui-shopping-park.com/urban/miyashita/news/1926780.html
RAYARD MIYASHITA PARK South 1F &BASE
2021/8/6-9/1
 
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ふと前を通りがかったら『かるびの「秘境」藝大探検』に出ていた渋谷の買える藝大を発見。
 ↓
かるびの「秘境」藝大探検 Vol.30
https://artplaza.geidai.ac.jp/column/2021/08/1miyashita-park-vol30.html
 
係の人に「上野の方には行きますか?」と聞かれ「(今いるMIYASITA PARKの)上の方に行きますか?」と勘違いした私(上のフロアでも何か藝大がやっていてその誘導かと思った)は「行きません」と答えてしまった。その後、藝大プラザが上野にあるという案内を受けて、ああ、そういう意味だったかと分かったのですが、特に訂正はしませんでした……すいません、上野には良く行きます。
 
 
 
東京ビエンナーレ 2020/2021
https://tb2020.jp/
東京都心北東エリア(千代田区、中央区、文京区、台東区エリア)
2021/7/10-9/5
 
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どうも相性が良くないようです、東京ビエンナーレ。良く調べて行かない私が悪いのですが……。念入りに知らべて行かないと判りにくく、行っても見れない展示もありました。ざっくり空き時間に散歩がてら観たり出来るような展示だと思ったんだもの……。
 
内藤礼の展示だけでも行かねばと思ったらすぐに予約が埋まり(そもそも内藤さんの作品は土日のみ公開なので、この期間の私が土日業務でチャンス無く)。せめて宮永愛子、柳井信乃を見ておこうと湯島聖堂に行ったらお盆でお休み。ただし、後日改めて行こうかと調べたら二つとも会期が終了していたと。ところが後日、柳井さんの展示は開始延期しているという情報があり、改めて行けば見れたか……というすれ違い。
 
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神田明神に行ったら門馬美喜作品は展示終了していて、AR作品のみ公開。
 
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それならと期間中だと確定している神田の立花文穂の作品は柵越しの鑑賞。
 
と、まぁ、調べなかったのが悪いのではありますが、ちょっと調べてみるのにしても難しい。チラシ代わりの新聞を見ていったのですが、これが会期と場所を把握するのが大変で、またお盆休みなどは書いていないので、これだけ見てまわると私の様になります。これを見て、イベントカレンダーと照らし合わせ、サイトも確認して、さらに会場のサイトまで見ないと難しいのはちょっと大変でした。更に全体会期の中でさらに個別会期がバラバラなので、それをわかる造りになっていない。イベントカレンダーの会期別に色分けされていて、作品アイコン色にリンクするなど何かわかりやすいやり方があったのではないかと思ったりもします。まぁ、ちゃんと念入りに調べて行けってことですね。
 
 
 
BAKU TAKAHASHI Exhibition ─ MENTAL PICTURES #2 ─
https://www.spiral.co.jp/topics/mina_to/baku-takahashi-exhibition
スパイラル Entrance
2021/8/17-8/29
 
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植物なのか?古代彫刻なのか?積み木を積んだものなのか?不思議な形の作品を作る方でした。
 
 
 
山崎美弥子展 “Night Rainbow”
https://www.spiral.co.jp/topics/spiral-garden/night-rainbow
青山スパイラル スパイラルガーデン
2021/8/24-9/6
 
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ハワイの在住の作家さん。人気があるようですね。自然派な女性たち、有名人などにファンが多いような、そう言う女性誌などに取り上げられる作家さんのような感じです。作品もきっと売れそうです。

 

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サーリネンとフィンランドの美しい建築展

サーリネンとフィンランドの美しい建築展
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210703/
パナソニック汐留美術館
2021/7/3-9/20
 
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フィンランドのモダニズムの原点であるエリエル・サーリネン。フィンランド時代を中心にした展覧会です。ミッドセンチュリーで有名な息子のエーロ・サーリネンも最後に少し出てきます。アール・ヌーヴォーの影響を受けながら民族独自の文化的ルーツを表現。それから新しいフィンランドらしさを提示しようとしてモダニズムへ。最後にアメリカに渡ります。
 
自然と共生するフィン人、そしてフィンランドで最も重要な文学作品「カレワラ」の紹介があり!これが面白かった!この「カレワラ」、民族の言葉であるフィンランド語の伝承詩を集めたもので、天地創造、いにしえの信仰、4人の英雄が宝を奪い求め戦う冒険などが書いてあります。
 
大地の乙女が海の風によって身籠る。カモが乙女の膝の間に7つのたまごを産み、その砕けたかけらから世界が形成したと言う天地創造。そして、生まれながらに年老いた魔術師で歌い手である族長 ヴァイナモイネンの誕生。イルマリネンという天空を鍛造した宇宙神。
 
気が短く、トラブルメイカーの美青年レンミンカイネンはポポヨラ村のロウヒに戦いを挑み、最期、水蛇の毒で殺される。そして母がバラバラの遺体をつなぎ蘇らせる。ポポヨラ村の支配者で老婆ロウヒに助けられたヴァイナモイネンはその願いで富を生み出す奇跡の物体サンポを天空を鍛造した宇宙神イルマリネンに頼んで作ってあげます。
 
なんだかんだあって、ヴァイナモイネンとイルマリネン、レンミンカイネンはサンポ奪回に向かいます。いろいろあり、サンポは砕け海に沈む。一部は海岸に打ち上げられフィンランドに、富と繁栄をもたらす。
 
うーん、面白い!
 
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建築については、サーリネンが中心になったパリ万博フィンランド館が話題になります。また、ポスターに載っている階段があるポポヨラ保険会社ビルディングはサーリネン含む3人で立ち上げた事務所で設計した最初の商業建築。これらに民族の歴史風土に由来する「カレワラ」モチーフの装飾が施されます。
 
20世紀初頭になってからは大規模公共プロジェクトとしてヘルシンキ中央駅などを手がけます。歴史的様式ではなくアール・ヌーヴォー様式が採用。
 
そして最後には息子のエーロサーリネンのデザインした家具がありました。父と協業、その後には独立してアメリカ、ミッドセンチュリーを代表する建築家になります。JFK国際空港TWAフライトセンターやチューリップチェアなどが有名。
 
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いつものルオー・ギャラリーでは「塔のある風景」と言うテーマの展示。ルオー生誕150周年記念でフォトスポットがありました。
 

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