イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
https://mimt.jp/israel/
三菱一号館美術館 2021/10/15-2022/1/26
三菱一号館美術館「印象派・光の系譜」展に行ってきました。日本で人気の印象派の展覧会、土日は既に混雑している様ですね。後になるほどさらに混みそうなので行くなら今のうち!?※ブロガー内覧会に出席、以下掲載の写真は許可を得て撮影されています。
ちなみに三菱一号館美術館、来年の展覧会スケジュールが発表されています。上野リチ展、シャネル展に続いてヴァロットン展の開催とは嬉しい!
この展覧会「印象派・光の系譜」、69点展示のうち59点が日本初公開という名品たちが並んでいます。イスラエル博物館といえば死海文書やエッシャー作品ですが……他にもこんなに印象派の名作が揃っていたとは。印象派が好まれるのはユダヤ、アメリカ(プロテスタント)、そして日本と言います。宗教性が無い絵画=印象派の作品が人気、という共通点があるのですよね。
内覧会の様子
さて、タイトル通り印象派とそこから連なる系譜を見て行く展覧会。印象派以前のバルビゾン派の作品が並び、そこから影響を受けた印象派、そしてその印象派から影響を受けた新印象主義やポスト印象派の作品と続きます。「光の系譜」とは良く名付けたもの。
今回の展覧会では水、自然と人、都市、人物と静物などのテーマ別に章立てされていますが、私はこの展覧会に出ていない流派もふくめて、印象派前後の流れを振り返りながら見ていきたいと思います。
まずは印象派以前。印象派に影響を与えたのが、屋外で作品を作ることを始めていたバルビゾン派(コロー、ミレー、ドービニーなど)、他にもロマン主義(ドラクロワ、ターナーなど)、写実主義/レアリスム(クールベなど)などになります。
コローの絵などが並ぶ序盤の展示
今回の展覧会ではバルビゾン派のコローやドービニーの作品がまず並んでいました。他にもブーダンやクールベの良品も。モネの海とクールベの海の比較ができたりするのも嬉しいですね。
そして印象派。当時、芸術としては低い位置づけだった普通の人やものや景色を描く行為。屋外での制作、前衛的な筆触分割などによって伝統を打破しようとしていたグループです。アカデミズムに反対する若き反抗心というものでしょうか?当時としては最先端の前衛芸術だったのですよね。アカデミックなフランスよりもアメリカなどでまず作品が買われたと言います。
イスラエル博物館所蔵 クロード・モネ「睡蓮の池」
今回の展覧会ではモネの睡蓮の連作を比較できるのが見どころの一つ。それも見事な作品ばかり。イスラエル博物館所蔵の睡蓮をまず途中の大きな部屋で見る事が出来ます。1907年の作品、睡蓮の当たり年だそうです。
特別展示:和泉市久保惣記念美術館 及び DIC川村記念美術館所蔵 クロード・モネ「睡蓮」
そして後の方の部屋に特別展示として日本にある同じ構図の睡蓮を2点展示。DIC川村記念美術館と和泉市久保惣記念美術館所蔵の睡蓮が並んでいます。なんと、後日もう一点睡蓮(東京富士美術館蔵、11/30から)が追加されるという贅沢。モネの連作は構図は近くても時間が違うと光の加減や色合いが変わってくるのが面白い。
これぞ印象派な安定安心なアルフレッド・シスレー「サン=マメス、ロワン川のはしけ」
アメリカの印象派チャイルド・ハッサム「夏の陽光(ショールズ諸島)」の明るさ
印象派としては安定安心のシスレーも良い。とても地味なのですが、とにかく地道に風景画を描いていて、ずっと心は印象派な画家です。アメリカの印象派、ハッサムの綺麗な絵も目を引きました。
目を引くカミーユ・ピサロ「エラニーの日没」
そして見事なピサロもあります。ピサロは一度新印象派の影響を受けて点描手法を手掛けていて、その浮気心をうまく自分の作品に、技法に取り込んだもの。
ピエール=オーギュスト・ルノワールの人物画の中に1点カミーユピサロ(一番左)の人物画
展覧会後半にあった人物画や静物画コーナー、人物画はルノワールが独壇場かと思ったら一番左にあるピサロの人物画が良かった。ピサロはあまり人物画は描いていないようですが、これは欲しいなぁ。
印象派と同じ時代の画家 ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」
また、三菱一号館美術館と言えば、ルドンの「グラン・ブーケ」も印象派と同時代に活躍した作家として見る事が出来ます。
そして印象派後として新印象主義(スーラ、シニャックなど)、ポスト印象派(ゴッホ、ゴーガン、セザンヌなど)の作品も良い物ばかり。
ポール・シニャック「サモワの運河、曳舟」の点描は目を引きます
セザンヌの初期の頃の筆跡が荒々しい作品
今回の展覧会には綺麗なシニャックがありましたね。新印象主義と言えば点描技法による派手さが目立ちますが、構図などもうまいです。また、セザンヌの初期の粗い風景画などは初めて見ました。このころから実験体質なセザンヌさん……。
ポール・セザンヌ「陽光を浴びたエスタックの朝の眺め」
フィンセント・ファン・ゴッホの名品が並ぶ
セザンヌはとにかく、何を見ても、風景画でも静物画でも、どれを見てもセザンヌと分かるのがすごいですね。後はゴッホもやはり良い。麦畑の緑に赤いポピーを乗せた見事な作品と積藁を描いた黄色の名作とが並んでいる場所、ここでは誰もが足を止めてしまいます。同じ時期に東京都美術館で開催している「ゴッホ」展も併せて見に行きたいところ。ゴッホ展の後にこちらに来るのもこの時代の流れを把握するのにも良さそう。
ポール・ゴーガンはどの時代の絵も才能を感じさせてしまう
ポール・ゴーガン「静物」、まるでセザンヌの様な
また、ゴーガンの部屋。個人的にはゴーガンの絵は好きにはなれないのですが、常に才能あふれる絵を描く天才だということは判ります。静物画コーナーではパッと見はルノワール作品の綺麗さが目に入るのですが、ゴーガンの静物画がかなりセザンヌっぽくて良い。意識していたのでしょうか?
レッサー・ユリィの都市を描いた絵が話題になっています
そして話題のレッサー・ユリィ。今回の展覧会のミュージアムグッズ、こちらでレッサー・ユリィのポストカードがとても人気とのこと。なんと、一度売り切れてしまい、急いで追加で再入荷したらしいです。
三菱一号館美術館のブログにも出ていますが、今回ポストカードを額装してみましょうという提案のコーナーながある様です(私が行った時間はショップがしまっていてこのコーナーまだ見れず……)。ポストカードせっかく買ったならうまく飾りたいですよね。
↓
10月15日に「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展が開幕しました。
https://mimt.jp/blog/store/10736/
レッサー・ユリィ「赤い絨毯」、タイトルも良い
ナビ派のピエール・ボナール「食堂」
展覧会の最後の部屋にはレッサー・ユリィの人物画がありました。レッサー・ユリィ作品の中では個人的には一番これが目に入ってきましたね。さらにこの最後の部屋にはゴーガンに影響を受けたナビ派、ヴァイヤールやボナールの作品があります。
この印象派の流れをくんでいくと、この後、表現主義やフォーヴィスムやキュビズムとなります。表現主義(カンディンスキー、シーレ、ムンクなど)、フォーヴィスム(モロー、マティス、ヴラマンク、ルオーなど)、キュビズム(ピカソ、ブラック、レジェなど)あたりに関しては現在 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「甘美なるフランス」展を併せて見るとつながっていきます。セットで見てほしいです。
| 固定リンク
コメント