速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―
速水御舟と吉田善彦 ―師弟による超絶技巧の競演―
https://yamatane-museum.jp
山種美術館
2021/9/9-11/7
速水御舟は好きな作家でこの山種美術館でも今まで何度も作品を見ていたのですが……こんな細やかな所までじっくり見たのは初めてかも。そのくらい今回の展覧会では御舟の技法に沈み込めました。そして弟子の吉田善彦は古田様式と言う面倒でこだわりな手法が有名。少し変態的なこだわりが凄くて病みつきになりますね。
速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》山種美術館所蔵
まずは速水御舟、今村紫紅の色彩に影響を受け、岸田劉生の西洋の技術を意識し、そして墨や琳派などの技法に戻ってきます。とにかく上手い。苔は砂子で表現、芝は花緑青の水を弾く性質を利用する、など素材の特徴と実際の表現をうまく組み合わせている。金箔でなく撒きつぶしで金を表現するなど。様々な技法を習得していて、それを適切なところで使える。それでいて絵としてのバランス感覚も良い。画家として最強ですよね。
速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》一部 山種美術館所蔵
速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》一部 山種美術館所蔵
《桃花》の3Dの様なぷっくり感や《夜桜》の夜の背景に浮かぶ銀色の様な桜の花の透け感はじっくり近くで見るとため息が出ます。《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》の蜘蛛の巣には雲母を使って揺れる感じを表現。《紅梅・白梅》の右の赤は古木、左の白は若木というのは知りませんでした。《和蘭陀菊図》は裏彩色をして居たという。伝統的な古画の研究をしていたからこその技法の選択。
最後の小部屋なんてここだけで御舟展と名乗ってもおかしくない。《暗香》は夜の梅の香りが見える様。《あけぼの・春の宵》のシルエットと空気感、そして《炎舞》のくっきりとした部分とぼんやりした部分の差の妙。
吉田善彦は御舟、小林古径、安田靫彦に師事した人。古田様式と言う面倒でこだわりな手法が有名。彩色してもみ紙、紙をくしゃくしゃにしたものを伸ばして金箔貼る。
目を引いたのは《桂垣》と言う絵の構成・デザインの強さ。これは琳派の様な日本画におけるデザイン性を持つ福田平八郎の様だなとも思いました。執拗な木のシルエットを描いてたと思ったら後期の絵の色の美しさなど、ちょっと変態チックな感じなのに、気持ちよい絵が多いと言うやみつきになりそうな作品たち。
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