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川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―

川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―
https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564
大田区立龍子記念館
2021/9/4-11/7
※掲載している写真は内覧会で許可を得て撮影しています。
 
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現代アートと川端龍子の作品が並ぶ壮観な展覧会でした!現代アートコレクター 高橋龍太郎氏のコレクションと川端龍子の絵がコラボレーションする展覧会です。現代アートをこの館で展示するのは初めてとのこと。
 
大田区には川端龍子、髙橋コレクション、川瀬巴水とアートが豊富と言います。今回は前二つのコラボとなりますね。そして龍子記念館から歩ける距離の大田区郷土博物館で川瀬巴水展が9月20日まで開催というのも良いです。
 
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ちなみにこの龍子記念館は、大田区に暮らした川端龍子が自らの設計によって自宅の前に開館した美術館です。龍子の作品を展示するための空間なのですね。天井の高さ、間仕切りの無い一繋がりの部屋、どれも流離の大きな作品にぴったりで「会場芸術」を目指した龍子にふさわしい会場でした。
 
全部今の時代の現代アートかと思う位に斬新で、現代アートもこの会場に負けていない。これらがこの部屋に並ぶのがしっくりきます。
  
龍子の絵と、会田誠とのモチーフ、鴻池朋子との表現、天明屋尚との世界観、山口晃―との着眼点など、絵具の差はあれど日本画の原点から発する多様な表現と近似点を見比べることのできる展覧会です。
 
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まずは入り口すぐにこの展覧会を象徴する二つの作品が見えます。手前の壁側に川端龍子《香炉峰》、奥の方には会田誠《紐育空爆之図(戦争画 RETURNS)》 。ともに戦闘機をモチーフにした作品。
 
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川端龍子《香炉峰》(大田区立龍子記念館)。なんと透明な機体の戦闘機と言う斬新な絵です。大きさもすごい。この空間に似合ってます。
 
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会田誠《紐育空爆之図(戦争画 RETURNS)》(高橋龍太郎コレクション)。こちらは加山又造の千羽鶴と洛中洛外図屏風をイメージしたと言う話もある会田さんの屏風絵。ホログラムペーパーの戦闘機が煌めいています。引用を超えた作家の個性へ昇華した作品とも言えます。
  
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いくつか川端龍子《水雷神》(大田区立龍子記念館)など戦争をイメージさせる龍子の絵が並びます。その中の一つ川端龍子《爆弾散華》(大田区立龍子記念館)。これがすごい。爆風で野菜などいろいろなものが飛び散る様を絵にしたもので、本来なら惨劇のはずなのに、一瞬を切り取ったこの絵ほまるで琳派のデザイン的な美しさにも見える。
 
戦争をイメージする事で会田誠との繋がりのようにも見えるが、爆風で吹き飛んだ感じが次の鴻池さんの飛び交うナイフに繋がるようにも見えます。
 
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鴻池朋子《ラ・プリマヴェーラ》(高橋龍太郎コレクション)と川端龍子《百子図》(大田区立龍子記念館)が並びます。動物と子供たちの笑顔の暖かさが鴻池さんの不思議な桃源郷の様な世界観が現れた作品につながっていくのか。鴻池さんは映像作品《ミミオ-オデッセイ》もありました。
 
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そして川端龍子《草の実》(大田区立龍子記念館)の黒い背景に金泥の草の絵。こちらはキリッと締まった感じですが、これらもある意味では桃源郷の様な世界ですね。東近美にあるほぼ同じ作品よりも一回り小さいのは個人向けに描いたものだからとか。
 
その奥には川端龍子《源義経(ジンギスカン)》 (大田区立龍子記念館)。源義経が大陸に渡りジンギスカンになったと言う逸話を元にした絵。ラクダと武者絵の組み合わせの違和感を楽しむ絵。
 
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そこから続いて山口晃《五武人圖》(高橋龍太郎コレクション)。組み合わせの違和感をニヤリとさせる絵ならお手のものなのが山口画伯。ここでは武者絵と現代の武器やメカニックの組み合わせ。一部骸骨のようなところは幽霊画からの引用でしょうか?
 
その隣にある川端龍子《夢》(大田区立龍子記念館)はその幽霊(絵に出てくるのはミイラ)に繋がるものか。とにかく目を引く幻想的な絵。ミイラが見る夢。飛ぶ蛾が夢なのか、それとも夢に集まる蛾なのか。
 
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山口晃《當卋おばか合戦》高橋龍太郎コレクション)ではバイクと馬の融合、現代人が扮する武士など詳細を見て楽しむ絵です。それに対して川端龍子《逆説・生々流転》(大田区立龍子記念館)でコミカルにも見えるが、実は台風に流されて困っている人々を描いたものを対比させています。
 
この《逆説・生々流転》は驚異となる水の流れを描いたもの。タイトル通り元ネタの横山大観の水の恵みの絵とは逆のことを描いたものですね。
 
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そして最後に川端龍子《青不動(明王試作)》(大田区立龍子記念館)と川端龍子《十一面観音》(大田区立龍子記念館)に挟まれた天明屋尚《ネオ千手観音》(高橋龍太郎コレクション)。
 
龍子の描いた観音と青不動を両脇に天明屋さんが描いた銃器を携えた千手観音があるという不思議な並び。さらにはその奥には龍子が持っていた奈良時代の《十一面観音菩薩立像》(大田区(東京国立博物館寄託))そのものがあります。
 
戦争から始まり、桃源郷を経由して、夢を通り過ぎ、信仰へといたる。そんな気配を感じた展覧会でした。展示室以外にも時間によっては敷地内の龍子の旧宅+アトリエや庭を見ることもできる様ですのでゆっくり余裕を持って行くと色々と見ることができそうです。
   
川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―
https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564
大田区立龍子記念館
 
2021/9/4-11/7 9:00~16:30 (入館は16:00まで) 
休館:月曜日(9月20日(月・祝)は開館し、その翌日に休館) 
入館料:大人500円、小人250円 ※65歳以上(要証明)と6歳未満は無料
主催 (公財)大田区文化振興協会
後援 朝日新聞東京総局、日本経済新聞社
   

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