北斎づくし
生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」
https://hokusai2021.jp/
東京ミッドタウン・ホール
2021/7/22-9/17
※掲載の写真は内覧会で許可を得て撮影しております。
もう、なんて言えば良いのでしょう?超変態的(←褒めています)な展覧会です。毎年、浮世絵に関する展覧会は色々と開かれていて北斎の作品はどこかで見ることができます。
そして今年は北斎絡みの展覧会が多いです(生誕260年記念に加え、おそらくオリンピック開催に合わせて海外の人に対し、有名な北斎を取り上げた企画が多く出たのでしょう。しかし、海外から来る人は大きく減ってしまいましたが……。)。しかし、その中でも最も深く、こだわりが強く、ハマる展覧会と言えるのではないでしょうか?この展覧会は。
北斎漫画のコレクター 浦上満さんのコレクションの凄さ、建築家 田根剛さんの思い切った会場デザイン、アートディレクター 祖父江慎さんのこだわり、ライターの橋本麻里さんのわかりやすい解説とクリエイションにも手を抜いていないものになっています。
初めの部屋、『北斎漫画』の全ページ公開の部屋ですでに圧巻。この展覧会の凄さを見ることができます。天井のバナー、床や壁へのプリント、そして500巻ほどの展示冊子、本当に北斎漫画、全部。北斎漫画は15巻あり、それを各ページ全て見せているのです。本来は本をばらさないとそんな事は出来ないはずですが、それが出来る簡単なアイデアがありますね。本が(各巻満遍なく均等に)500冊程あれば全てのページを開いて見せる事が出来るのです。
いやー、アイデアとしては簡単と言っても、それを持っていないと出来ません。そして、それを持っているのがコレクターの浦上さんなんです。実際には1500冊ほど持っていると言う事で、良い状態のページを選りすぐって展示しているとのことです。
人物、動物、景色など様々なもののスケッチ集として人気絵手本だった『北斎漫画』。これを全てのページをいっぺんに見ることが出来る展覧会は今回限りなのではないでしょうか?
そして北斎といえば『富嶽三十六景』。こちらも全部です。三十六景に加え人気で追加された十景を合わせた46枚をずらっと並べています。人気の赤富士や神奈川沖浪裏ももちろんあります。
赤いぐるっと回る大きな空間。美術館などではなかなか出来ない贅沢な使い方ですね。『北斎漫画』も全部、『富嶽三十六景』も全部、まさに北斎づくしと言うタイトル通りの展覧会になっています。
デジタル技術を使ったシアターも面白い。静止画である北斎漫画の登場人物たちが動いています。凸版印刷の技術を使った入り込む映像コーナーが作り上げられていました。
北斎は物語の挿絵も手掛けています。『新編水滸画伝』などの流行りの物語のダイナミックな挿絵本が展示されていました。馬琴の書く物語に北斎が劇画を付けていく、そんな贅沢なコンビで作られた本があったなんて!実はこの部屋は一番の必見コーナーなのではないかな、と思いました。こちらも床から壁まで劇画が埋まっている空間造りになっています。
最後の展示室は『富嶽百景』。よく、百も富士山が出てくる景色を描けますよね。アイデア枯渇しないのかしら?本当の天才だったのでしょうかね。そう考えるとこの展覧会の狂った偏執さ(褒めています!)は北斎自身のその偏執さを展覧会という形にしたものなのではないかと思えてきます。北斎と言う人の才能や正体をイメージとして見せてくれる、その一つの解がこの「北斎づくし」なのですね。
出口にあったこの「サヨウ二」。 Tシャツになっていましたね(これ、初日に一度売り切れたとか!)。そうこちらミュージアムショップも面白いです。
祖父江慎さんのブックデザイナーとしての本領発揮しているのが図録です。新聞紙大のサイズの冊子に全ての『北斎漫画』が掲載。こちらも「北斎づくし」なものになっています。他にも会場で天井から吊り下がっていたバナーを一筆箋にしたもの、豆皿や絵葉書など。先にあげたTシャツもそうなのですが祖父江慎さん+ミュージアムグッズ担当会社のEASTさんとのコラボ製品など、目を引くものばかり。
狂気の展覧会、あれも全部、これも全部な、「北斎づくし」の名に恥じない展覧会でした。
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