渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画
渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画
https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2020/seitei/seitei_ja.htm
東京藝術大学大学美術館
2021/3/27-5/23
東京藝術大学大学美術館で開催されている渡辺省亭展の内覧会に参加させて頂きました。この一連の写真は内覧会で許可を得て撮影しています。
美術館の展覧会でここまで渡辺省亭(せいてい)の作品が揃うのは初めてではないしょうか?明治時代を中心に活動をしていた画家で、海外での評価が高く、日本でも当時は認めれていながらも、後半は中央画壇から距離をおき、そのうちに知る人ぞ知る画家となりました。
そして、その細やかに描かれた花鳥画などにより近年再評価され、アートファンには有名になりつつある所、この良いタイミングでの展覧会です。
渡辺省亭の作品として有名なのは、無線七宝の濤川惣助との協業となる迎賓館赤坂離宮の七宝額ではないでしょうか。省亭の描いた原画が展示されています。この原画をもとに濤川惣助が無線七宝の作品として完成させ、迎賓館赤坂離宮(当時の東宮御所)に飾られています。
描かれているものたちがちょっと美味しそう。海の幸、山の幸、鶉や鴨ですら美味しそうに見えてきます。御殿のお食事で出ていた材料じゃないですよね?
濤川惣助との協業では見事な七宝の壺などもありました。万国博覧会などに出品された七宝作品の原画を担当しています。原画の細やかさも良いですが、これを七宝で再現する濤川惣助も凄いですよね。
先ほど、海外での評価が高いと描きましたが、省亭の作品は万国博覧会などに出品されたり、ロンドンの画廊で取り扱われたりしています。今でも海外の美術館が省亭の作品を持っていて、今回もメトロポリタン美術館から良い花鳥画たちが里帰りとなりました。
今回の展覧会で驚いたのは花鳥画以外にも様々な絵を描いていたこと。花鳥画の上手さで知っていた画家でしたが、季節の行事を描いた絵、信仰心が現れている観音図、歴史人物図、美人図などとにかく幅が広いです。
省亭の描いた美人画が鏑木清方に影響を与えていたという話もあるそうです。なんと、あの美人画で有名な鏑木清方へ影響を!
他にも出版物の挿絵や口絵を手掛けたり、本の編集にも関わっています。山田美妙、坪内逍遥、尾崎紅葉など有名な作家の本の口絵や挿絵を手掛けたというのですから、おそらく当時ではかなり人気だったのでは無いでしょうか?
美術雑誌『美術世界』の編集などにもかかわっています。木版の美しさに拘った美術雑誌、作品集などが展示されています。
伊藤若冲のオマージュ作品などもありました。明治時代ではまだ再評価もされていなかっただろう若冲の絵を勉強していたというのもすごい。四条円山派的な絵もあり、いろいろと器用な人だったのでしょうか?
しかし、省亭の本髄はやはり花鳥画だと思います。図案から始まったとされる省亭の観察眼や技術、とにかく細かな描写が素晴らしい。本当に近くでこれらの絵をじっくり見てほしい。動物や鳥の毛並みの描き方などそのリアリティのある細かさは本当に凄い。
写生に基づく四条丸山派ならではの日本画の技術に西洋の写実性も加え、これが印象派の画家たちをも魅了したという絵か、と。日本画家としてパリにも行き、ドガなどとも交流があったといいます。
幅拾い仕事の紹介、花鳥画の細やかな描写、海外からの里帰り作品と省亭の全画業の紹介というのが相応しい展覧会でした。前期後期で作品替えもあります。前期 3/27-4/25、後期 4/27-5/23となります。
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