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海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~

海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~
https://www.shukokan.org/
大倉集古館 2020/11/3-2021/1/24
※事前予約不要。営業時間や休館日等詳細はホームページを参照ください。
 
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陶磁器好きにはたまらない展覧会でした。オーストリアのロースドルフ城に伝わる陶磁コレクションとその修復作品を見ることができる展覧会。
 
加えて佐賀県立九州陶磁文化館所蔵の古伊万里の名品が並んでいるのです。有田焼の歴史をおさらいしながら海外から来た名品を楽しむことができるというものになっていました。
 
※このエントリの展示写真は特別に許可を得て撮影しています。
 
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この展覧会は、茶道家である保科眞智子さんがオーストリアのロースドルフ城 現城主ピアッティ家と出会い、城に伝わる陶磁器の破片について知ったことが発端となったプロジェクト「古伊万里再生プロジェクト」に関連するものです。
 
ロースドルフ城に伝わる陶磁コレクションの多くは戦争により破壊され、その陶磁破片の中には日本で作られた古伊万里のものもありました。今回の展覧会のポスターも破片状態のものと修復されたものが並んでいますね。
 
 
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色絵花卉美人文盆器(組み上げ・部分修復) ロースドルフ城 所蔵
 
大倉集古館1階に入り、まず目に入ってきたのが今回の展覧会にとって象徴的なものでした。ロースドルフ城所蔵の古伊万里もしくは古伊万里をモデルとした倣製品1対を1つは一部割れた状態で、もう1つは修復したものを展示。修復前の写真もあります。
 
 
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1階展示風景
 
さて、そこから1階の展示は「第Ⅰ部 日本磁器の誕生、そして発展」として有田焼の歴史を辿るもの。ここでは日本磁器誕生の地としての有田、そして古九谷、伊万里、鍋島、柿右衛門、古伊万里金襴手と続き、一度途絶えた海外貿易が幕末に復活し、明治にかけて再び評価を得たと言う流れが展示品とともに説明されています。
 
ここで知っておきたいことととして有田焼、伊万里焼、古伊万里、古九谷様式、柿右衛門様式、古伊万里金襴手様式、鍋島焼様式という言葉が出てきますね。もちろん、前知識無くても会場の解説で理解できますが、これらの単語を事前に頭に入れておくとより楽しめます。
 
 
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1階展示風景 佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品、佐賀県立九州陶磁文化館 柴田夫妻コレクション、今右衛門古陶磁美術館所蔵品、大倉集古館所蔵品などから名品が揃う。
 
現在では有田町地域で作られた磁器を「有田焼」、伊万里市(の主に大川内山地域)で作られた磁器を「伊万里焼」として区別しています。
 
ただし昔は、有田町地域やその周辺で制作されたものもすべて伊万里の港から輸出されていたため、消費地域ではそれらをまとめて「伊万里焼」と呼んでいました。また、現代の「伊万里焼」と区別して江戸時代に盛んに輸出していた時代のものを「古伊万里」と呼んでいます。
 
 
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1階展示風景 柿右衛門様式など。
 
当初は青単色の絵付けしか無かったのですが、その後様々な様式が出てきます。
 
「古九谷様式」は以前は加賀の九谷産と言われていた為にその名がついている青・黄・緑を使った色絵のもの。「柿右衛門様式」は乳白色に赤を中心とした色絵で、余白を生かした日本画のような図柄を描いたもの。

 
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1階展示風景 幕末から明治にかけての再評価。万国博覧会をきっかけに香蘭社が創業。
 
「古伊万里金襴手様式」は幅広い扱いがあるが、染付の上に金襴手という装飾がされた赤や金色をした豪華な磁器を主に指します。「鍋島焼様式」は鍋島藩の管理のもと献上品として作られた高級品です。現代の「伊万里焼」はこの鍋島の流れを汲むものになります。
 
 
  
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2階展示風景

さて、2階の展示は「第Ⅱ部 ウィーン、ロースドルフ城の陶磁コレクション」としてロースドルフ城の陶磁コレクションを中心に展開されています。古伊万里だけなく、中国の景徳鎮、西洋磁器のマイセン窯のものなどがあります。
 
 
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2階展示風景 ロースドルフ城所蔵品と今右衛門古陶磁美術館所蔵品が並ぶ。
 
面白いのは日本陶磁、西洋陶磁、中国陶磁のそれぞれが影響を与えあっていること。古伊万里風の模様のものが景徳鎮や、マイセン窯で作られていたり、有田で作られた瓶をランプシェードに加工したり、西洋風に金属フレームを取り付たりしています。
 
 
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2階展示風景 ロースドルフ城展示のイメージ
 
そして、第二次世界大戦後にこれら陶磁器の多くは破壊されてしまいました。現城主ピアッティ家はこれらの破片を廃棄せず、戦争がもたらした悲しみを伝えるものとして保存し、公開しているのです。
 
 
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2階展示風景 ロースドルフ城所蔵品の破片と修復、破壊された破片を見ると心が痛みます。
 
それらの破片の一部が陶磁器修復の第一人者 繭山浩司氏によって修復され、完成品として蘇るものを展示で見ることができます。一つの器として完成しているような修復や、破片のつなぎ目が見える組み上げ修復された陶磁器が並びます。
  
 
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2階展示風景
 
破片とはいえ、そこから読み取ることができる文化の交流や昔の技術、流行りなどの文化などは大事な文化遺産。それを実際に見ることができる展示はとても貴重ではないでしょうか?
 
 
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地下ミュージアムショップ
 
オリジナルグッズもいろいろと制作されていました。陶磁器の模様を元にした組紐やバッグなど。図録も良く出来ています。
 
日本の陶磁器の歴史を名品で振り返りたい、海外の文化交流を見たい、そんな人にはおすすめの展覧会です。

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