〔企画展〕生誕150年記念 横山大観 ―東京画壇の精鋭―
〔企画展〕生誕150年記念 横山大観 ―東京画壇の精鋭―
山種美術館
1/3-2/25
今年は色んな話題の展覧会が開催されることが既に発表されています。展覧会当たり年と言ってもいいと思います。アートファンにとっては10年に一度の当たり年、近年にない良い出来、今世紀で最高の出来、豊満で朗らか絹のようにしなやかしかもフレッシュで輝かしい、そんな年に……なるのでしょうか!?
その中でも、おそらく日本画で一番話題になりそうなのが生誕150年を迎える横山大観ではないでしょうか。年明けから佐賀の方で横山大観展が開催されているようです。4月13日から東京国立近代美術館で開催(その後6月8日から京都国立近代美術館に巡回)する横山大観展も話題ですね。
そして、東京でのこの横山大観 生誕150周年の始まりは1月3日から既に開催されているこの山種美術館の横山大観展になります。その内覧会に参加してきました。
※写真は内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。
※作品はすべて山種美術館蔵です。
さて、横山大観ですが、美術にあまり興味ない人でもこの横山大観の名前は知っている、と言う人もいるほど近代日本画家の中では有名な人ではないでしょうか?
《銘板 嶽心荘》[書:横山大観 刻:中村蘭台 〔2代〕]
この展覧会では山種美術館所蔵の横山大観の作品がなんと41点!加えて資料が5点見ることが出来るという、開館以来初の機会だと言うことです。山種美術館創立者の山﨑種二の別荘に「嶽心荘」と名付けたのは大観であり、その大観の描いた書を木彫りにして銘板としたそうです。そして大観の資産運用までしていた山﨑種二……ああ、そうか、それ、本業でしたね、笑。ま、その位、交流が深かったと言うことでしょう。
大観というと有名なのは、間違いなく富士山の絵です。もう、それしかイメージがないという人もいるでしょう。また、有名作家と言うのもあり、大きな作品・大胆な絵画みたいなイメージがありませんか?私はそうでした。ところが、実は大観さんってば結構繊細な絵を描く方でしたのね、と言う様な作品も多かったです。
横山大観《霊峰不二》
と思いつつもまずは富士山からいきますか。まずは入ってすぐドーンと富士山です(左上あたりの映り込み失礼しました)。展示室入口の看板やWEBの展覧会紹介に使われている絵です。形が美しいですね。大観が描きたくなるのも判る様な気がします。
左:横山大観《心神》、右:横山大観《富士山》
第二章の後半にあったのが富士山コーナー。同じ富士山の絵でも描き方が違いますね。さらになだらかな稜線が向かって右にあったり左にあったりと見ている方向も違うようです。どこから見た富士山を描いたのでしょうか?
横山大観《富士》
雲が画面の大半を占めていて、富士山はほんの少ししか見えないのに、でも結局は富士山に目がいく、主役は富士山であると言う構図が好きです。こう言う構図の面白さをしかけている絵は他にもありました。大きな構図や余白の中に小さな鳥などを入れたりすることによってそこに目が行くような繊細な仕掛けは狙ってやっていたのでしょうね、きっと。
横山大観《蛙》
この絵、タイトルが蛙なのですが、ぱっと見は竹の絵にみえます。
横山大観《蛙》(部分)
拡大してみると絵のほぼ中央辺りに蛙がいます。墨一色というのもありぱっと見は蛙の絵だとは判りませんが、一度こいつを見つけてしまうと大きな空間の中に蛙がたたずんでいるのが想像できるようになります。
左から横山大観《松竹梅》、横山大観《華厳瀑》、横山大観《飛瀑華厳》
右二つの滝の絵、水が散り霧の様に空間を締めるさまが素晴らしいです。まさにこれこそが朦朧体と称された描き方でもあるのでしょうか。
横山大観《松竹梅》(部分)
一番左の丸い窓から見ているような絵は、この中に松竹梅3種の植物が全部入っています。墨の黒一色だけかと思ったら色もついていて、構図と色のバランスの妙が素晴らしいです。大観はこの様な松の描き方を多くしているようで、確かに他の松の絵も似ている描き方をしたものがありました。
横山大観《竹》
今回の展覧会で私が一番好きな絵です。構図など琳派を意識しているとの事で、なるほど私が好きなわけ(琳派好き)ですね。
横山大観《竹》(部分)
この竹は墨だけで描かれていますが、墨の濃淡だけで遠近を表現しています。シンプルなのですがとにかくカッコいいです。
裏箔サンプル
竹が光に包まれているように地が黄色く見えるのは絹面の裏側から金箔を貼っているからだと言うことです。貼っている時とそうでない場合のサンプルがありました。古い仏画などで使われていた技法らしいです。
横山大観《作右衛門の家》
大観は他にも伝統的な日本の技法などを学んでいたようです。この絵はやまと絵や南画の技法を使ったもの。ちなみに山種美術館恒例の普段から撮影OKなものは今回の展覧会ではこちらの絵です。
横山大観《春朝》
富士山だけでなく桜も多く描いた大観。山桜を描いていたとのこと。日本と言うものをしっかりと見つめていた画家だったのかもしれませんね。ただし、富士山に関してはあれだけ(2000点ほどだとか)描いたのに一度も登ったことはないと言う話。遠くから見た富士山が美しい……ってことにしておきましょう。
横山大観《木兎》
こんな絵もありました。とても幻想的な雰囲気です。こんな絵も描くのですね。
横山大観《波に叭呵鳥》
この絵、なんか可愛かったです。叭呵鳥は波打ち際で……何しているんでしょうね。
横山大観《波に叭呵鳥》(部分)
とぼけた顔してますし、なんか目つきが悪い、笑。どんな時に描いた絵なのか気になります。
こちらも山種美術館恒例になりますが、展覧会に出ている作品の中からいくつかからイメージして作られた和菓子。真ん中の「雲の海」は横山大観《心神》に右上の「不二の山」は横山大観《霊峰不二》のイメージ菓子。共に雲のなかから頭を出した富士山のモチーフがいいです。右下「冬の花」は横山大観《寒椿》を、左上「葉かげ」は横山大観《作右衛門の家》を、左下「花のいろ」は横山大観《山桜》を、それぞれイメージしたものです。
この展覧会には横山大観の師である橋本雅邦、東京美術学校や日本美術院で共に学んだ下村観山や菱田春草などの作品も展示されています。今年の大観イヤー、展覧会を見比べて大観と言う人を様々な角度から見てみる良い機会ではないでしょうか?
また、最近あちこちの美術館でトークをやっている6次元のナカムラさんが、1月20日に山種美術館でこの展覧会絡みのギャラリートーク『横山大観ナイト』@ 山種美術館をやるそうです。イベント参加費1000円とお得。あのナカムラさんがどの様に大観を切り取っていくのか興味あります。
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6次元
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