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没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―

山種美術館の「川端龍子 ―超ド級の日本画―」の内覧会に参加してきました。いや、これ、この夏必見の展覧会ではないでしょうか?そして一つだけ言っておきます、この方のお名前はリュウコさんではなくリュウシさんで男性です!そこからです。
 
 
 
没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―
山種美術館
6/24-8/20
 
※写真は内覧会により特別に美術館の許可を得たものです。
 
山種美術館と言うと上品な日本絵画を展示している、着物の女性が似合う、そんな展覧会が多いイメージです。和菓子を嗜み、暑い夏に一息入れるのにちょうど良い落ち着く美術館ですよ、と書きたくなる、そんな展覧会が多いイメージ(はい、全て私の勝手なイメージですが)。
 
ところが今回の展覧会は、そんな今までの山種美術館のイメージとはちょっと違う、ダイナミックな作品が多いものでした。※いつも通り和菓子もあるし、展示室の中は涼しいのでご安心を。着物で行くにも、暑い夏に一息入れる場所としても相応しいです。
 
 
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左 《草の実》(一部)大田区立龍子記念館蔵
右 《香炉峰》大田区立龍子記念館蔵
 
まずはこの展示会場の写真。ちょっといつもの山種美術館と違う……そんな展覧会です。本当にこの夏に必見の展覧会だと思います。
 
川端龍子の名前を知らなかった方もいるとは思いますが、明治から昭和になった頃の画家で、横山大観などと近い時代に活躍していた方です。この方、はじめは洋画を描いていて文展にも入選しています。20代の頃は新聞や雑誌等の挿絵画で人気となり、その後アメリカへ修行に行きます。帰国後には日本画家へ転向して再興院展に入選。それから軋轢などにより院展を脱退し自分で「青龍社」を創立。……という具合に様々な経験をしています。ええ、文展と院展を経験してその後に最後には自分で団体を起こしていたとは。今で言うスタートアップですかね(違う)。
 
 
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花鳥双六(『少女の友』第10巻1号付録)
 
上の写真は挿絵作家として活躍していた時期の雑誌の付録(双六)です。こう言うのも描くことが出来るという器用な作家さんだったのでしょうか?まぁ、その幅の広い経験により、日本画らしくない日本画や、ジャーナリズム性の高い絵など今回の展覧会でも様々なタイプの絵画が展示されています。迫力もあり、それでいて掴みずらい様な面もあったり、とにかく多様な作品の並ぶ展覧会となっています。
 
 
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《鳴門》山種美術館蔵
 
龍子の描くダイナミックな絵は日本画の本流とは異なり、批判的な意味をこめて「会場芸術」と言われたそうです。龍子はその言葉を逆手にとり、時代性が反映され、広く大衆に訴える絵画と言う意味として使っていきます。一番上の会場写真にある幅7.2メートルを超える《香炉峰》はその代表的な作品です。戦闘機のボディを半透明にして背景を見せるなんていう手法は一体どこから思いつくのでしょうか。 
ダイナミックと言えば「青龍社」を創立してから開催した青龍展第1回展に出品した作品《鳴門》の迫力も素晴らしいですが、龍子はこれを描いたときには鳴門の渦潮を直に見ていなかったとか。近くで見ると波間に金を使った煌きを見ることが出来ます。
 
 
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《龍巻》大田区立龍子記念館蔵
 
この《龍巻》もダイナミックながらも変わった作品です。海洋生物たちが天から降り注ぐように見えるこの作品は、実は元々は竜巻で上っていく様に描き始めていたものを、途中で天地をさかさまにして完成させたものだとか。
 
 
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《爆弾散華》大田区立龍子記念館蔵
 
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《爆弾散華》(一部)大田区立龍子記念館蔵
 
この絵、戦争で自宅に爆弾が落ち、吹き飛ぶ野菜を描いたものだそうです。爆弾が落ちていながらもそれを描く画家根性とでも言うのでしょうか。爆弾の勢いが金箔で表現されています。金箔をこの様な表現で使うのはそれまでの日本画家には居なかったということですが、そうですよね。
 
 
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《草の実》大田区立龍子記念館蔵
 
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《草の実》(一部)大田区立龍子記念館蔵
 
私が個人的に好きだったのがこれです。紺地に金で描かれた草花が渋い。この色合いどこかで見たなと思っていたら、平安時代の装飾経からヒントを得ていたのですね。書の展覧会などでみる黒や紺ベース地に金文字などで描かれているあの色合いはカッコいいですものね。この絵で描かれている草花は焼金、青金、プラチナ泥など数種類の金泥の使い分けで描かれているのもいいです。
 
 
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手前 《請雨曼荼羅》大田区立龍子記念館蔵
奥 《香炉峰》大田区立龍子記念館蔵
 
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《請雨曼荼羅》(一部)大田区立龍子記念館蔵
 
こちらの手前にあるのが《請雨曼荼羅》。かんばつに苦しむ水辺の生き物たちが画面のあちこちに描かれています。真ん中の白鷺が小魚を天に捧げて雨を乞うというシュールな絵です……。
 
 
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《夢》大田区立龍子記念館蔵
そしてもう一点目を惹いたのがこの《夢》。棺おけ(?)に死体(?)の頭上に蛾の群(?)、と?ばかりの絵ですが、中尊寺金色堂に安置されていた藤原氏四代の遺体の学術調査を元に描かれているとのこと。それも現地まで行った上で構想された絵とのことです。新聞などの挿絵を描いていた時代に養われたジャーナリズムがこの絵や《爆弾散華》などのきっかけになったようです。
 
ジャーナリズムの精神をきっかけに、と言うともう一点有名なのは後期展示(7/25-8/20)で出展される金閣寺の炎上事件を描いた《金閣炎上》東京国立近代美術館蔵。後期には伊勢物語が描かれた《八ツ橋》山種美術館蔵も出てきます。それも《八ツ橋》は写真撮影可です(前期は《真珠》山種美術館蔵が撮影可)。
 
展覧会にはダイナミックな絵ばかりでなく子供を描いたもの仏教関連の絵、龍子が絵画以外に情熱をかたむけた俳句関連の資料などもありました。家族関係も少し複雑だったがゆえに、自分は人の子でなく竜の落とし子だと言うことから雅号を龍子としたという話もあります。意外に、と言ったら失礼ですがかなり真面目な人だったとのことで、そう言った本質的なところも見え隠れしている、そんな展覧会でした。

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