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ある日の苦悩と哀しみ

完全なる作り話、つまりフィクションです。読み物です。
一見、事実みたいに見える所もあるかもしれませんが全くの
フィクションです。事実があってもかなり演出しております。
いや、事実はありません。

これはフィクションですこれはフィクションですきっとフィクションですこれはフィクションです


「うわっ、なんだこれ!」
私は改めて自分の体を見て思わず叫んでしまった。

さっきから体全体が痒くて掻いていたのだが、まさかこんな状態とは。
全身にじんましんが出来ていて、それが半端じゃない量。もう、自分で見て
も気持ち悪いくらいにブツブツが体のあちこちが膨れ上がっている。
心当たりと言えばさっき食べた食事だが、特別な物は何も食べていない。
いつも食べている物しか食べていないはず、なのに何故だ?
夜遅くの食事だったので既に日が変わっている。遅い時間の食事に対して
体が受け付けなかったのだろうか?
体の調子はそれほど悪い訳でもない。弱っていると言う感じはしない。
勿論、ストレスはあるが、それほど溜め込んでいると言う事もないはず。
まぁ、こんな時間に騒いでも仕方ないので、朝になったら治まっている事
を祈りながら寝る事にする。

痒みでぐっすり寝る事が出来ず、なんか気分の悪い一日の始まりではあ
るが、結局は朝になっても、かゆみもブツブツも残っていたので仕方なし
に病院に行く事にした。
近所の内科に言ってみると、医者は一目で
「ああ、じんましんですね。判りました。」と。
この痒さ、それは俺も判っているわ。一言で済ますな!と言いたかった
が、それはそれ、医者を敵に回す程、私も馬鹿ではないので
「そうなんです。」
としおらしく頷く。
「昨日何食べました?」
と言う医者の質問に
「納豆とめかぶ、銀ダラ、ブリ、水菜って所です。」
と答える私。
「そうか、ブリに対するアレルギーの可能性は高いですね。」
「え、でもブリなんて今まで何度も食べたし、好きな食材なんですけど。」
「アレルギーってのは好き嫌いとは全く関係ないし、今まで大丈夫だった
けど、急に駄目になるって事は結構あるんですよ。」
「はぁ、そんなもんですか・・・。でも、これからブリが食べられなく
なるってのは辛いなぁ。好きなのになぁ。」
「まぁ、ブリが原因とは決まったわけじゃないですがね。青魚系は可能性が
高いですよ。」
とこんな会話をしながら薬を処方してもらう事となる。

食事後にじんましんが出たので、まぁ、可能性としては食事の何かが原因
だと言う事は私でも容易に想像が出来る。
しかし、昨日は好きな物ばかりの食事だったのでそれがアレルギーの
原因だとは思いたくない、と言う心情がとても強くある。医者が何を言っ
てもブリで、もしくは昨日他に食べた食材が原因で、今までアレルギーに
なった事など一度も無いのだ!そんな事あるはず無い、と思いたい。

自慢にもならないが、昨日食べた物は調味料に至るまで把握している。
自分で料理をしたからだ。まぁ、良い年した男性が一人でマメに料理して
いるのも寂しくないか?どうなんだ?とは思うが、逆に、良い年した独り身
の男だからこそ、自分一人で料理くらいは出来るようにならないといけな
い、まぁ、そう言う世知辛い世の中であるのは間違いない。
まぁ、幸か不幸か、それで調味料まで覚えているのだから、それは幸い
と、昨日の食事を思い出してみる。

納豆とめかぶは市販の物を混ぜただけ。銀ダラは味噌を塗って焼いた。
味噌が少し古かったかも。ブリは出汁と生姜、酒、味醂、醤油で煮た。
水菜はブリを煮た出汁を元にポン酢、からしを食加えて和えた。
うーん、どう考えても自分的にアレルギーが出るような物は無いなぁ。

食材が古くなっていたって事は無いだろうか?と医者に聞いてみる。
「今、お腹壊してますか?」
「いいえ、大丈夫ですが。」
「じゃあ、可能性低いですね。」
うーん、納得。

「今日明日は動物性タンパク質は避けて、治った後に一品ずつ試して行
くしか無いですね。それでまたアレルギーが出たらそれが原因です。」
うーん、尤もですね。気が遠いが。

「今日と明日は動物性のタンパク質、肉や魚はもちろん、加工品も食べな
い様にして下さい。挽肉とかかまぼこ、バター、卵、牛乳等は駄目です。」
「え、それじゃ何が大丈夫なんですか?」
「野菜やパン、バナナなどですね。あと、鰹節も駄目ですよ。」

・・・えー、パンにしてもバターを塗っては駄目なんでしょう?ハムや
チーズを乗せる等ももちろん駄目な訳だ。素で食べろと!
それに最後にサラッと言った、鰹節が駄目???何それ?
和食は何も食べられないって事じゃないですか!
いや、確かに鰹節は、言われてみれば動物性ですよ。
でも、この日本で鰹節を避けて生きて行くって出来るのですか?
私は日本酒好きなので、夜飯は大抵和食絡んでるし、外食する場合に、
味付けで鰹節が入ってない物を探す方が難しいでしょう。店でこの出汁は
鰹ですか?昆布ですかって?わざわざ確認しなきゃいけないんですか?
さらに自分で料理する時だって、何で味付けすれば良いんですか?
全部塩と胡椒と醤油のみ??
2日間くらいは我慢出来たとしても、もし、鰹節にアレルギーがあったと
判った日には、もう今後の食生活が絶望的じゃないですか!
外食は絶対に出来なくなるじゃないですか!
気になるあの子に飲みに誘われても外食行けないじゃないですか!
気になるあの子と駅でバッタリあっても飲みに誘えないじゃないですか!

と、言うような考えが頭の中を駆け巡ったが、病院でそんな事を叫んでも
仕方ないので少しブツクサ言いながらも薬を貰って帰って来る。

それで2日間程食事は仕方なしに植物性のみで構成する事にした。
その日の昼は野菜を適当に炒めて、トマトソースを絡めたスパゲッティ。
ただ、これだとなんか腹持ちしないんですよね。すぐ腹が減ってしまう。
まぁ、薬が効いたのかじんましんは治まったので少し気分を良くして外出。

この日は妹と会う予定になっていた。明日が父親の誕生日だったのでプレ
ゼントを二人で送ろうと言う相談をする。じんましんの話や最近何か面白い
本がなかったか、映画の話など、つまり脱線話ばかりして、具体的にプレ
ゼントを何にするかはそこでは決まらなかった。
そんなこんなしていると腹が減って来る。やはり野菜中心だと腹持ちしない
のだ。こういう時はあまい物だ、とメニューを見てみる。葛餅があった。
モチは何が入っているか判らないが、まぁ、わらび餅って言う位だ大丈夫
だろう。きな粉も大丈夫。黒蜜?まぁ、問題ないでしょうと注文をする。
幸か不幸か洋菓子よりも和菓子の方が好きなので全く問題は無い。
肝心のプレゼントに関してはとりあえず金額の目安や何が良いか等の
意見交換をして帰って来る。

帰り際に薬が切れて来たか、少し痒みが出て来た。まだ自分の中に毒素
が残っているのであろう。自分の好物の食材を毒素として考えたくなくて、
もう、やるせない思いは強くなる一方なのだが。仕方ないから、とにかく
様子見でしばらく野菜のみの食生活を送るしか無いな、と心に決める訳で
ある。しかし、ファーストフード店のポスターがやたらと目に入って来る
のは辛い。

帰り道ではスーパーに寄り、野菜を買い込む事にする。
腹持ちする野菜と言うと芋系かな。里芋が食べたいが、鰹節を使えないの
では味付けが無理か。ジャガイモにして塩、胡椒で食べるしか無いな。
あー、バターや塩辛を乗せたいなぁ。明太子でも良いのに。
塩、胡椒、醤油が味付けメインだったらチャーハンにでもするか。
キノコ、キャベツ等野菜タップリで量でごまかしてやれ!とばかりに買い
込む。横目に入ってくる魚や肉がやたらと美味そうに見えるのが非常に
憎々しい。

家に戻って来て夕飯の支度。昨日炊いたご飯と買って来た野菜を炒める。
まぁ、何か物足りない感じはある物の腹は膨れて落ち着いた所でこの
状態をゆっくりと考えてみる。

そう、鰹節。字の通り鰹から出来ているのである。ああ見えてもれっき
とした青魚系の食物である。青魚にアレルギーがある人が多いと言う話
は聞いた事はあるし、まぁ、多少癖のある食べ物だと言う認識もあるの
だが・・・

そもそも、である。青魚が食べる事出来ないと非常に私は困ってしまう。

私は青魚大好きな人間なのである。アジがサンマがブリがトビウオが
好きだ!と言い張って来て生きて来た。中でもアジのたたきなどは好き
すぎて学生時代に魚を3枚におろす事を覚えたくらい。もう、無人島に
何か持って行くならアジのたたき、死ぬ前に食べるならアジのたたき、
ってな位大好き。
どう、こんな俺、庶民的で安上がりで良いでしょう?と言うのを売りに
する位なのである(まぁ、本当に売りになっているかどうかはともかく、
だが)。

そんな私に取って青魚が食べる事が出来ない等のは、もう、死活問題に
等しい。大げさな、と思うかもしれないが、いや、本当に私にはそれ位
の問題だ。もう、何かの呪いじゃないだろうか、と思った、時に、ふと
思い当たる事が。いや、実はその事に関しては薄々頭の中にあったの
だが、目を背けていた物を思わず見てしまった、と言うのが正しいか。

父親の誕生日が明日、なのだ、と言う事は・・・今日はなんと別れた
彼女の誕生日である。父親と一日違い。
これはつき合っている時は良いが、別れた後には結構やっかいで、
父親の誕生日がくるたびに思い出ししまうのである。
その元カノの誕生日にじんましんが出て、食生活が変わってしまうかも
しれないと言う大事件が起こる。これはただの偶然ではないだろう!
偶然ではないなら、じゃあ、なんなんだ?
そうだ、呪いだ!

その彼女とは結構長い間同棲をしていた、この部屋で、である。
そして、4ヶ月前に別れて、彼女は出て行った。
考えが別れた彼女の呪い論に終着した私は、部屋を見渡す。
「きっと、この部屋のどこかに彼女の仕込んだ呪符があるはず。」

私が青魚無しでは生きて行けないと知っている彼女は別れ際に、私を
苦しめる最も効果的な呪いを仕掛けたのだ。そう間違いない。
きっと「禁断青魚」とか「食楽断絶」とか「半分少女」とか、そう
言う呪いの札を貼って行ったに違いない!

そう確信した私はとにかくその呪符を探す。もう、部屋のそこかしこ、
棚の裏側、机の引き出し、をひっくり返してみる。
この行動が徐々に自分の首を絞めている事にだんだん気付いて来る。
知らないうちに「うめぼし食べたーい」などと口ずさんでいる自分に
気付く。
そう、この行動は別れた彼女の痕跡を探しているような物なのだ。
もう、4ヶ月前の話で、すっかり吹っ切れて、忘れた事をわざわざ
ほじくり返しているようなものである。
呪いの札探しをしていると言うのに
「俺は弱くなった。一人で生きて来た期間の方が長いのに、たかが
数年誰かと一緒に暮らしていただけで一人で生きる事が辛くなって
しまった。弱くなってしまった。」
などとつぶやいているのだから情けない。
幾ら男の子(もちろん「子」と言う歳ではないが)でも寂しい物は
寂しいのだと、自分に言い聞かせるのは良いが、何故、このタイミ
ングでそんな事を考えなければいけないのだ、とも思ってしまう。

そんな事をしてるうちに私は発見してしまった。
そう、私にとっては間違いなく呪符となるものを見つけたのだ。
その札には丁度1年前の日付が書いてあった。
よりによって私の字でこう書いてある。
「Happy Birthday!これからもずっと一緒に!」


これはフィクションですこれはフィクションですたぶんフィクションですこれはフィクションです

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