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私達が忘れているもの、でもそこには、きっと何一つ不思議な事はなく~家守綺譚

今年も色々と本は読んだ(って今年のまとめにはまだ
早いけど)。伊坂 幸太郎さんの本は久々に作家買い
をした位、面白い話が沢山あった。

ただ、今年読んだ本の中で一番だったんじゃないかな?
ってのはやっぱり梨木 香歩さんの「家守綺譚」ですね。

梨木さんの本は今まで「西の魔女が死んだ」を読んだ
のみだった。西の魔女~にはどうもピンとこなかった
のだが、もう家守綺譚にはズボッとはまりました。
夏目漱石「夢十夜」と芥川龍之介「河童」を合わせた
様な世界、と言うか(別に河童が両方に出てくるから、
だけの繋がりではないけど)とにかく不思議な、でも
暖かい世界が広がっているのです。日本人にとって。

えーっと、無茶苦茶長くなってしまったレビューです。
・・・でも、どうも書きたいことがうまく書けた気が
しないので、書き直すかもしれないけど。

「家守綺譚」梨木 香歩

元々は別の方のレビューを見て気になっていた本。
本屋で見つけて目次を読んだら、これは買いだ!と
もう信じ込みました。
だって、目次(つまり各話のタイトルです)が
サルスベリ、都わすれ、ヒツジグサ、ダァリヤ、
ドクダミ、カラスウリ・・・等々と全て植物の名前。
なんでか判らないけど、それを見た段階でもう買い!
でした。文庫本版だけど・・・。
Iemori

物書きの主人公が友人の留守家の守役としてそこに
住み、家や周辺で起こることを書き記したお話です。

植物や山や川には人の力の及ばない「何かの気」が
あり(それは八百万の神や妖怪などと呼ばれる事が
多いのかもしれないが)その自然の何かと人の距離
が今よりも近いところにあった、そんな時代のちょ
っとしたお話。ほんとうにちょっとしたお話です。

元々、日本の風土にはそう言う「何かの気」は人が
住んでいる周辺あちこちに居て、人と共存していた。
時代がどんどん進んで行きその距離はどんどん離れ
て行き、今ではその存在すら知らない、気が付かな
い人も多い。

でも、私達が子供頃、思い起こせば、そんな「気」
はすぐ近くにあった気がする。夜の雑木林の奥の
方、嵐の海の波間、雨の川の濁流、そんなあちこち
にそいつらは居た。間違いなく、何か居た。

そしてもっと昔の人たちはそいつらと共存しながら
生きていたんだ、と。山が震えるのも、天候が荒れ
るのも、花が咲くのも、その自然周囲にある「何か」
の影響を受け、その中で人もその影響を受けながら
生きていた、と。

サルスベリは主人公に恋をする。白木蓮は雷の子を
孕む。カワウソと人の掟破りの恋。子鬼と一緒に摘
むフキノトウ。飼い犬のゴローは山の主の仲裁役で。

一見不思議なお話だが、この土地ではそれは不思議
な事でもなんでも無い。逆になんでそれが不思議?
と訝しがる位に当たり前の事。

主観の差と言うのはそう言うものなのだろう。
主人公が何故?と思う。ところがここの住人には、
それが何故?でもなんでもなく当たり前の事で。
隣のおばさんはそれが「河童の抜け殻」である事を
当然の様に知っているし、山に住む何者かは欲しい
物が大名竹の若竹だと知っている。河童とサギが
仇敵同士だというのも、もちろん当然の話である。

まぁ、でも、よく考えれば当たり前の話です。
魚の旬などは都会で暮らしていると知る由も無い。
漁師さんに「へぇ、この魚今が旬なの?よく知って
ますね?」などと行ったところで漁師さんは「?」
でしょう。向こうは知識とか言う前にそれが当たり
前の世界で生きているのだから。

だからこの本に出てくる人(いや少し前に生きてい
た日本の人、と言っても良いけど)が私達が不思議
と思う事を不思議と思わず、それが当たり前の事と
して生きていてもおかしくないし、私達がそれを
知らない事の方が不思議なことなのかもしれない。
だって、世の中には子鬼が居て、花や樹には意思が
あり、大地を山を湖を守っている存在がいる、と
言う事に何の疑問があるというのですか?
一体、それを感じずして、どうやってあなたちは
生きて居るのですか?
生きている、と言う事は、それらの存在との共存と
イコールなのに!となるでしょう。

まさか、スーパーには肉は生き物の形を留めず、
野菜は野に生えず、魚も切り身で並んでおり、
自分が食べている物が元々は生き物だった、その
命を摂取している、などと考えた事も無い人が
世の中に居る、と言う事などは考えも付かずに。

うーん、どうもうまく言えないなぁ。

この物語の中で一番世俗的なのは長虫屋なのだろ
うか?世の中の存在を金に換える商売をしている
輩ではある。人を超える存在ですら商売に懸ける。
ただ、ある意味、一番自然に左右され、そこに近
い位置にいるとも思える。やっぱりクォーター
だから?

最後に物語の要はゴローです。間違いなく。

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コメント

 タイトル、表紙、目次そして内容と どれをとっても愛おしくなる作品ですよね。
 
 ワタシも<ゴロー>に一票です♪ 

投稿: ナラブーシカ | 2006/12/04 22:58

この世界観、まさに愛おしい、です。

やっぱりゴロー、ですよね!

投稿: KIN | 2006/12/08 13:49

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